きっと、彼は怒るんでしょうね。だから言えなかったんですけど。
なんで名字が変わってしまうと、あなたの体を乗っ取ると言ったのか。あなたの本当の名前も知らない人に、あなたと幸せになどなれないと思ったからです。
あなたのことをきちんと知りもしないで。……そういう判断で、その条件をつけました。
捨てられた過去を持っているあなたにとって、そのことを他人にわかってもらうのは酷かも知れません。それでもきっと今隣にいる彼は、そんなあなたごと包み込んでくれるやさしい心の持ち主です。
まあ少し異常なところもありますけど、その辺は…………葵、頑張って!
20歳というのは伝えた通りです。わたし自身が20歳まで生きられなかったので、それ以上の歳をあなたの体でとってしまいたくありませんでした。
短い人生ではありましたが、わたしの生きた19年少し。つらいことばかりでは、決してありませんでしたから。
……葵? そんな条件をたくさんつけてしまって、本当にごめんなさい。
ただ、異常に心配性だった霊が、あなたを何よりも大切になって、大好きになって、放っておけなかっただけなんです。きっと体の方も丈夫そうなので、血の方も問題ないんじゃないかと思います。
何かあれば、きっと海棠が助けてくれる。アズサのことがありましたから、きっと次に同じような人は出さないことでしょう。
心も、何かあれば支えてもらってください。
彼もよくあなたに言っていましたが、何もかも抱え込むことはよくありません。適度に吐き出して、彼をサンドバッグにするといいかも?
長文、本当にすみません。たくさんたくさん、わたしはあなたたちに隠し事をしてきたので。でも、これで最後です。
葵? 今、あなたの隣にはあなたが本当に好きになった人がいますか?
確かにわたしはアキラが好きになりましたが、あなたより大切なものはありません。
あなたの中でずっと思っていました。いつ彼への想いを自覚するだろうと。
初めての願いを叶える際、自信のなかったあなたを、彼はそっと背中を押してくれましたね。
彼からしてみたら、以前からあなたのことを好いていたんですから、助けになりたかったのは当たり前。
でも、あなたは下僕としてでも、勇気をつけてもらえた彼に、少しなりとも心が動きました。
確かに、いろんな人の言葉や行動で心が動いていましたけれど。……彼の時は落ち込む落ち込む。
どうして彼だと、堪えられていけるようなものが堪えられなかったのか。今ではその答えがきちんと出たみたいでよかったです。
きっと、空白の時間に何かがあったのではないかな? と思っていますが、それをわたしが知ることはないでしょう。
よければ海まで遊びに来てください。葵の苦手も克服がてら。
彼も、あなたの幸せをずっと願っていました。でも、あなたの幸せは彼と一緒でなければ育てることなどできません。
……ずっと苛々していました。彼に。
でもきっと、この手紙を読んでる時にはその彼と一緒にいるんじゃないかなと思います。
初めに言いました。わたしはあなたに愛を教えてあげたい。
好きという気持ち、もう今のあなたは十分わかったのでしょう。恋に落ちたあなたは、きっとこれから大好きな彼と愛を育むのでしょうね。ユズの受け売りですが。
名前を呼ばれ、きっとこの手紙を読んでいる頃は、わたしはあなたの元から離れ、安心して成仏していることでしょう。いろいろ迷惑を掛けてしまってごめんなさい。
つらいこともありましたが、あなたとこうして長い時間をともにできたこと、……わたしはとても幸せでした。
これからもずっと、あなたの幸せを祈ってます。
末永く、彼と幸せな日々を歩んでいってください。
今まで本当にありがとう!
ずっとずっと、大好きだよ!!
望月 紅葉



