すべてはあの花のために➓


「ありがとうヒナタくんっ」

「………………」

「いっぱいいっぱい! ありがとう!」

「……。いいえ」

「ずっと。……見ててくれて、ありがと」

「……うん」

「勇気。……出して、声掛けてくれて、ありがとう」

「うん」

「ちゅー。……しちゃってごめんね?」

「はは。それは、こっちが『ありがとう』かな?」

「へへ。……それから絵本。わかってくれて、ありがとう」

「うん。わかってあげられてよかった」

「あとは……んー、いっぱいあるよ。とにかくいっぱい!」

「そっか。……じゃあ、オレからいい?」

「え?」


 彼は、わたしの手を握り返し、もう片方はそっと腰に手を回してくる。


「『ありがとう』いっぱい、ありがとう」

「……へへ。いいえー」

「オレの世界に、色をつけてくれてありがとう」

「それは。……ヒナタくんがわたしを見つけてくれたからだよ」

「……じゃあ」


 そしてそっと。耳元で、そっと囁くように。


「オレと。……出会ってくれて、ありがとう」


 やさしい声で。そう言ってくれるから。


「……こちらこそ。わたしと出会ってくれて、ありがとう」


 何度も言うかも知れない。だって、何度言ったって、『ありがとう』の気持ちが止まらないんだから。


「……。っ。ちょ……。ひなたく……」

「ん? なに。あおい」

「……!」


 そしたらそのまま耳をめちゃくちゃ攻め出したから、止めるので必死。しかも、名前をなかなか呼んでくれないくせに、ここぞとばかりに耳元で言われたら力が入らない。


「……。す。すとっぷー……!」

「えー」

「ぺ、ペア……! ひなたくん解除解除……!」

「えー。解除しちゃったら盗聴できないじゃん」

「も……?! もういいでしょ……!?」

「……何想像したの」

「してない……!!」

「……解除、か……」

「……ヒナタくん?」


 どこか少しだけ顔に影が差した彼に、慌てて手を伸ばす。


「ああ。大丈夫だよ。いろいろ聞いたなと思って」

「え。……話してないこと以外にも聞いたのか」

「ううん。聞いたのはそれだけ。……本当にいいの? これとスマホ持って行けばオレのこと捕まえられるけど、解除しちゃったらもう証拠なくなるよ?」

「何故に恩人を捕まえねばならないんだ!」

「……本当に、いいんだね」

「もっちろん。……大事なんだ。これが。大切なものは、誰にも渡したくないよ」

「……そっか。ありがとう、あおい」

「ううん。何回も言うけど、わたしの方こそありがとうだし、お相子。ね?」

「……好きになったのが、あおいでよかった」

「わたしもだよ。……それもお相子?」

「そうだね」