すべてはあの花のために➓


 強制的に電話を終えたみたいだけど……ちょっと。電池まだまだいっぱいあるやんけ。


「……怒った?」

「(……ぷい)」

「ねえ怒った?」

「(……ぷ、ぷい!)」

「ねえねえ。……ごめんね? 怒ったんでしょ? 許して?」

「(ぷっ、ぷ――……!!)」

「ねえ。こっち見てってば」

「……むう!?」


 頬を両手でぶちゅっと包み込まれて、逃げられなくなってしまった。


「怒った? 許してくれないの?」

「……許すも何も。怒ってないもん」

「そうなんだ。よかった」

「で、でも。恥ずかしい」

「え? さっきあれだけしたのに?」

「……!! そ。……そういうことはっ。言ったら、恥ずかしい。から……」

「じゃあ好きってもう言わない」

「え……!?」

「だって恥ずかしいんでしょ? 言って欲しくないんでしょ? だったら言わないよー。嫌なんでしょ?」

「……。い、いじわる」

「しょうがないじゃん。好きなんだから」

「……。へへ」

「きも」

「ええ……!?」

「うそうそ。……でも、よかったね。二人も、ちゃんと話してくれると思うよ?」

「……。うん。ありがと。おひさま」

「……それの方が恥ずかしくないの……」


 笑いながら、わたしは彼の手にそっと自分の手を重ねた。


「……ヒナタくん」

「ん? ……なに?」


 そしてもう片方の手で、首元で揺れるハートに触れる。


「……に、似合ってる……?」

「…………」

「あのね。ヒナタくんにとっては、これが悪だとしても。わたしにとって、これは善なんだ」


 こういうこと自体、世間からしてみたら悪いことでも、これがなかったら、わたしはきっとみんなに話せないままだった。信じられないようなことをなんとかするには、こういうことをするのだって、きっと必要なことだったんだ。


「わたしにとっては、大切なものだよ。これも。……いっぱいの罪で汚れたと思ってる君も」


 そっと、彼の頬に手を伸ばす。泣き出してしまいそうな顔を、やさしく撫でる。


「……許すも何も。こういうことを、自分が傷付いてまでたくさんしてくれたことに関して、わたしは君に、たくさん『ありがとう』って言いたい」

「……変わってるね、やっぱり」

「よく言われる。……ヒナタくんには負けるけどね?」

「それは心外」


 そう言いながらも彼は、やわらかく笑っていた。笑ってくれた彼にそっと近づき、わたしも思い切り笑った。