すべてはあの花のために➓


 そう言ってヒナタくんは、首元をつんつん突いてくる。


「……いっぱい、無視もしちゃったから……」

「ちゃんとわかってるよ。そうするようにオレがしたんだし」

「だからね? わたしもいっぱい。……ごめんなさい。お相子だね」

「……うん。そうだね」


 額をこつんと合わせてきて、近すぎてあんまり見えないけど。目の前の彼の雰囲気はあたたかいから、きっと笑ってる。


「ヒナタくんがいてくれなかったらわたし、きっとモミジさんのことも、お父さんもお母さんも。……乾さんもエリカさんも、きっと好きにはなれなかったと思うんだ。エリカさんにはさっき酷いことしちゃったから、謝りに行かないと」

「きっと、あんたはそう言うんだろうなって思った。だから、……ちゃんと全部。たくさんたくさん調べて、そういうことを知られてよかったって。本当にそう思ってる」

「……。うんっ。ありがと」

「……どういたしまして、かな?」


 二人で小さく笑い合う。そんな小さなことでさえ、本当にあたたかい気持ちがじんわり広がっていく。


「……会いたいな。お父さんとお母さんに……」

「大丈夫みたいだよ」

「え……?」


 そう言って彼は、スマホをこちらへと向けてきた。その画面には、着信中の表示と名前が……。


「出る?」

「ひっ。……ヒナタくんが出て?」

「はいはい」


 スピーカーにして、彼は通話ボタンを押した。


「この電話は、現在使われておりません」

『ええ!? 嘘……!? どうしようくるちゃん! ひなたくんスマホ変えちゃったみたいなんだけど……!!』

「(……お父さんっ。相変わらずいじられてるんだね……)」

『そんなわけないでしょ。ひなたくんの悪戯よ』

「えー。なんでバラすんですかクルミさん」

「(おかあさんっ。相変わらず鋭い……)」


 相手はお父さんとお母さん。どうやら救出に成功したみたいだ。


『ひなたくーん! やったよ!』

「みたいですね」

『ありがとうひなたくん。……本当に全部救っちゃったわね』

「え。……オレ、あいつ助けられたって言いましたっけ」

『あなたのことだから、失敗なんてしないでしょ?』

『そうそうー』

「………………」

『……あれ? ひなたくん?』

『あなた、どうしよう。もしかしたらひなたくん、あおいに振られたのかも知れないわ』

『なんてことだ! かわいそうだから、今日はどんまいパーティーにしよっか』

『それってもっと惨めにならない? やめてあげてよ』

「……オレ、助けられても振られてることになってんだけど」

「ふっ、振ってないよ……?!」