「……理事長。今年もお願いしますね」

『……今年も、かい』

『え? 何があるの??』

「ああ、アオイ? ごめんけど、しばらく電話出てあげられないんだ」

『ええ!? なんで!?』

「ちょっとね。言いたくないんだ。ごめんね」

『ヒナタ……?』

「あ。でも3月に入ったら大丈夫だと思うから、また電話掛けてきてくれたら嬉しいんだけど」

『……長いね』

「ここにいるメンバーなら、アオイの愚痴も聞いてくれるだろうから、頑張ってみんなの睡眠時間削ってね」

『……わかった! 3月まで待つ!』

「え?」

『ヒナタじゃないとダメー』

「……アオイ? みんなも聞いてくれるよ? もしかしたらオレより面白いこといっぱい話してくれるかも」


 みんなには、ハードルを上げるなという視線で睨まれたけれど。


『ううん。ヒナタがいい。……ヒナタじゃないと、わたしは話せない』

「アオイ……」

『毎日掛けても嫌がらないし、絶対に最後まで聞いてくれるし、わたしのことも葵のことも、両方心配してくれるし。……電話。すぐに取ってくれるから』

「はあ……」

『だからね? 3月まで我慢する! 何があるのか知らないけど、なったらすぐに溜めてたやつを』

「溜めちゃダメ。あいつだって、今ただでさえ溜めてるんだ。アオイまで溜めたらダメだよ」

『……大丈夫だ』

「大丈夫じゃない」

『ううんヒナタ。本当に大丈夫なんだ。……だってわたしは、ヒナタに会うまでずっと。……ずっと堪えてきたんだから』

「……っ、だから! それをして欲しくないんだって。なんでわかんないの……!?」

『だったら言うけど、ヒナタじゃないとダメって言ってるの! なんでわかってくれないの!?』

「頑固者」

『わからず屋』

「意固地」

『不器用』

「うるさいな」

『そっちこそ』

「…………」

『…………』


 みんなから、一体どうしたら……と戸惑っている。


『わたしの方が葵好きだもん!』

「は? オレに勝とうとしてるの? やめときなって。オレマジで異常だよ? キモいよ?」

『へっ。何年一緒にいると思ってんだ! わたしの方が思い続けてる時間は長いぞ!』

「アキくんが好きなくせによく言うよ。ふざけるのも大概にしてよね」

『むかー!!』

「何。やるの」

『…………………………』

「…………………………」

『「「「「(……え。えっと……)」」」」』

『……じゃ! そろそろ寝るねー!』


 みんなはすってんころりと転げた▼


「うんおやすみ。ちゃんと布団掛けて寝るんだよ? 風邪引いちゃいけないから」

「え。……なんだったの今の」

「……よくわかりませんがあ」

「恐らくは、切る前の茶番かと……」

「私もそう思うわ……」

『仲良いね!』

『「どーもー」』