すべてはあの花のために➓


「それから、名前を呼んであげて、あんたを助けたら絶対乱闘になると思ったから、レンには逃げろって言ったけど。……まあ、何かあったら守ろうとは思ってた」

「まあわたしめちゃくちゃ強いけどね!!」

「それでも、守ってあげたかったんだよ」


 あの時と同じように。そっと、指を絡ませて手を握ってくれる。


「……うん。あり。がと」

「ま、試合前の栄養補給はバッチリだったからね」

「アイくんはそれをわかってたのかな?」

「いや、多分オレが食べてないっていうの聞いてたんじゃない? だから、吸収が早いの集めたんでしょどうせ」

「だったらお礼言いに行かなきゃ!」

「……うん。そうだね」


 またほっぺたをつんつんしてくる。……そんなに気持ちいいのかな。自分じゃわかんないけど。


「……ヒナタくん。いつの間にかいなくなってた」

「だって、巻き込まれたくなかったもん。あんたとミズカさんの掃除(、、)に」


 確かに、あの時は暴れすぎたかも知れない。すごい楽しかったけど。


「そのあとはここに来て、……オレでショックとか言われたらどうしようとか。ぐるぐる考えてたらうとうとしてた」

「なんだかんだで図太い神経してるよね」

「よく言われる」

「え。てことはさ、わたしが来た時寝てた?」

「お日様って、ポカポカであったかいよねー」

「寝とったんかい」

「うつらうつらね? だって寝てないんだもん。しょうがないじゃん」

「なけなしの勇気とか言ってたくせに、寝られる余裕はあるんだね」

「勇気自体はなかったけど、みんなに余裕は作ってもらえたからね」

「……そっか。よかったね。ヒナタくん」

「うん。言えてよかった。言って、よかったよ」


 こんなやさしく笑う彼の顔を、今まで見たことがあるだろうか。自分だけに向けられたものだと思うと、それだけで心臓が暴れる。


「だから賭けは、本当はあんたの勝ちなんだ。そうじゃなくても話そうと思ってたけど」

「そっか。わたしの知らないところで一人で賭けをして、一人で悶々としてたんだね?」

「その言い方嫌だ。苛々してたんだし」

「あれ。そんなに変わってない……」

「でも、これでやっと全部話せた。……ごめんね。しんどい思い、いっぱいさせた。いっぱい、ごめん」

「……あのね? 確かにしんどかった。でも多分それは、ヒナタくんだったからなの」

「うん。教えて?」

「……ヒナタくんにね、嫌われちゃったって思うのが、一番嫌だった」

「……うん」

「上手く話せなかった時怒ったでしょ? 今まであんなに声を荒げてるヒナタくん、見たことなくて。……こわくて」

「……うん」

「リボンも。……本当は泣いちゃいそうだった。それでも、泣いちゃったら余計に嫌われるかと思ったの。泣いて許されると思ってるのかとか、言われたくなくて……」

「言わないよ。泣いて欲しかったんだから」

「……。でも。嫌ってないって言ってもらえて。友達だって言ってもらえて。すごく嬉しかったの」

「……うん。そっか。それならよかった」

「だから。ヒナタくんが何かしてても、絶対に理由があるんだろうなって思って。……きっと、何かに気づいたから、危険な目に遭ってるんだと思ったの」

「だから嫌いって言ったんだね」

「き、嫌いじゃないよ……!?」

「わかってる。ちゃんと聞こえてたよ」