今度は、……アキくんには劣るけど、デカいペロペロキャンディーを突っ込まれた。
「君だけ置いていくなんて。そんなこと。……っ。できるわけないでしょ……?」
「(あい……)」
「一緒に。進もうよ。九条くん。君のことを許してあげられるのは、あおいさんしかいないから。ちゃんと話、しておいで? ちゃんとだよ? 全部言わないと、流石のあおいさんも、君のこと。……嫌いになっちゃうかもね?」
「(あいっ……!)」
「でも、ちゃんと話をして、それでも嫌いになっちゃったら、俺が慰めてあげるね。あおいさんがレンを好きになっちゃったら、……みんなで慰め合おう?」
「(待って。アイ……!!)」
アイは、小さく笑いながら扉の方へと進んでいく。
「君も。あおいさんを信じてあげてよ。言わないのは、言ってしまってもあおいさんなら自分のこと、許しちゃうと思うからでしょ? ……本当のところどうなるかはわからないけど。でもきっと、あおいさんは許してくれるんだろうね」
「(アイ! 待って……!)」
「でも……逃げないで。九条くん。自分だけ楽な道に進もうなんてこと、俺らがさせないよ。あおいさんのこと、みんなが許してあげて、君が名前を呼んであげる。今までこうして頑張ってきたんだ。最後は、一番頑張った人がやらないと」
「んんー……!!」
「あおいさんが本当の意味で助かったあとは、今度は君の番だ。……行っておいで? 花畑。きっとあおいさんならそこに来るって、わかってるんでしょ……? 全部全部。話しておいで? それで、やさしいあおいさんに許してもらっておいで? ……一緒に。前に進むよ。してきた罪を背負って生きる方がよっぽどしんどいの、君ならよくわかってると思う。でも、逃がしてあげない。君も、俺らと一緒。やさしいつらさ、味わっちゃえばいいよ」
そう言って扉を開け、一度こっちを振り向いて。
「最高の棋士には、……最高の駒がつきものでしょう?」
そう言い残して、部屋から出て行ってしまった。
「(……ロープ。解いて行ってよ、せめて……)」
椅子にぐるぐるに縛られて? おでこに熱冷まし貼られて? 口にはデカすぎて取れない飴突っ込まれて?
「(……ははっ。どんな拷問だよ)」
確かに、三人にやれと言われたことはキツいし、とんだ拷問だ。それが今から待ち受けてると思うと、めちゃくちゃ怖い。
「(……許してもらう、か……)」
なんでこうもアイは、オレの心の奥底まで気づいちゃったのかな。アイだけじゃない。カオルも、レンだって。
「(……キツいよね。ほんと)」
許してもらえて、確かに気持ちは楽になった。それでも、してきたことが変わったわけでも何でもない。
「(……ほんと。よくできた駒だよ)」
どこで間違えたかな。いや、最初からだろうな。本当に。
……もう、逃げられない。逃がしてもらえない。
やさしすぎる、残酷な鎖に。囚われてこようか。



