髪は少ししか切られなかった。そのあとカオルはレンの髪を切り出した。……それは、オレと全く一緒の髪型だった。
「……ッ、レン……!」
「【オレを王子に仕立て上げ、そのままあおいさんとくっつける】……お前の計画はこうだったよなあ」
「え。……れ、レン?」
「アイさん。レンくんどうしちゃったんですかねえ」「あれは、相当怒ってると見た!」と二人でなんか楽しげに言い合っていたけれど。
「どうしてそんなことができるのか、不思議で不思議でしょうがなかった」
「……なんだろ。オレ、レンが今悪役に見える……」
「そんな暢気なことを言っていていいのか? 話は理事長から全部聞かせてもらった。お前が、オレに似せて後夜祭に出たこと。ここにいる人たち全員に言うぞ」
「……!? ッ、理事長! 言うなっつったのにい……!」
「その恰好で、あおいさんに接触し口説きでもしたのかは知らないが、みんなにバラされたくなかったら最後までオレにでもなっとけ」
「れ、……れん?」
「証拠がないとでも? 残念だが、桜庭さんはすでに買収済みだ」
「ッ!? ……ひ、卑怯!」
「何とでも。……さあ、どうする九条。ここで大人しくまたオレになるか、それとも今ここで、後夜祭の時にそんなことをした挙げ句、あおいさんをオレとくっつけようとしてる馬鹿なことを、全員にバラしてもいいんだぞ」
「……っ。わ、わかった」
「よし」
「神父はやってあげてもいい! だから、花畑は絶対にレンが行っ――」
「ふざけるなよ」
「……!!」
「……アイさん。あれ、誰ですう?」
「一応レンだと思う!」
「い、いえ。一応でなくてもそこはレンくんだと思うんですがあ……」
それにしても、あまりにもいつもの立場が逆転しているので、アイとカオルはゴシゴシと目を擦っていた。
「カオル、アイさん。やっておしまいなさい」
「「はーい」」
「黄門様かよ……!」
そんな突っ込みを入れている間に、銀のスプレーを頭にぶっかけられた。
「九条の言う通りだな。理事長はすぐに準備してくれた。超特急で」
「っ、……で、でも! 声が変わってなかったらもう初めから式がぶち壊しに」
「その辺も抜かりはない。これが、お前には何に見える?」
「……!! な、んで。……だって。それは皇に置いて」
レンがぷらぷらとオレの前で揺らしてるのは、あの赤い蝶ネクタイ。
「理事長に頼んで持って来てもらった。お前の部屋に忍び込んでな」
「……だから長かったのか、電話……」



