すべてはあの花のために➓


「――……レンは神父になって、あいつとアイに誓約を話す」

「ああ」


 部屋に来たら、もう一度式の流れからレンの動きを説明した。


「それで、あいつの番になったらそれとなく流れを変えて、オレらに合図を送る。……そうだな、『みんなに許してもらうと直接言ってもらっても?』的なこと言えばいいと思う。『直接言う』っていうのが必要だからね」

「ああ」

「そうしたら、本当の参加者がざわつき出すと思うから一喝入れるとして、まあ酷かったらコズエ先生に入ってきてもらおう」

「ああ」

「あいつ自身が自分を許してやること。それを聞いたら、あいつの本当の名前を呼んでやって、あいつが本当に結婚したいのかを聞く」

「ああ」

「その後は絶対に乱闘になるから、大急ぎでその場から立ち去ること。ただの足手まといだから……まああいつが守ってくれると思うよ? ストッパーかけなくてよくなったあいつ、めっちゃ強いと思うし。取り敢えず、巻き込まれないように逃げればいいと思う」

「ああ」

「……レンちゃん聞いてる?」

「ああ」

「さっきからそればっかりだね」

「ああ。それで?」

「ん? そうしたらね、今朝行ったとこわかる? 花畑。そこで待ってたら多分あいつ来るから、そこで神父の自己紹介してあげてよ。それから」

「九条はどうするんだ。動きは」

「え? オレ?」

「ああ」

「オレは、仮面着けて、オレの番になったらハルナのことを許してあげて。あとは……傍観?」

「……そうか」

「レンはとっても重要な役目だからね。大変だと思うけど頑張っ」

「オレもそっちの方がいいな」

「……どういうこと。レンちゃんこっち来てもダメでしょ」

「そんな複雑なこと、オレは覚えられない」

「嘘つけやい。打ち合わせした時バッチリだったじゃん」

「じゃあ、面倒くさい。だからしたくない」

「面倒くさいってあなた……」

「わかった。それじゃあこう言おう」


 そう言ったら、扉から誰かが入ってきた。


「どもども~。美容師さんですよお~」

「アシスタントでーす」

「え。……カオル? アイまで。何してんの。タキシードに合うね」

「ありがとおございますう」

「どもども~」

「……で? どうし――」


 どうしたのか聞こうと思ったら、目にも止まらぬ速さで、座ってた椅子にロープでぐるぐる巻きにされた。


「え。……何。まさか今までの演技だったの。あいつ消すつもり」

「まっさか~。そんなわけないじゃないですかあ」

「……じゃあ何。なんでこんなことになってんのオレ」

「これは、俺らからのプレゼントだよ」

「こうなってる時点でプレゼントじゃないよね。今から酷い目に遭うんだよねオレ」

「まあ、ある意味酷い目に遭うんじゃないか。自分が計画したものとは、急遽変更になるんだから」

「え? それってどういう――」


 そう言うが早いか、いつの間にか敷いていたビニールシートの上に運ばれて、カオルが髪にハサミを入れてきた。


「動かないでくださいね。殺したくないんで」

「え。めっちゃ怖っ……」


 真面目なトーンでそんなこと言われたら動かないし。というか動けないし。


「……何? なんでいきなりオレ、髪切られてるの?」

「残念だが、お前の計画は失敗に終わると。そういうことだ」

「何。下剋上でもするつもり? 結婚式なんで挙げずに、さっさとあいつの名前呼ぶの」

「いいや。ただのポジションチェンジだ」

「は?」