「あ。長かったですね理事長」
「あれ? そんなに話したのかな」
オレがそう言ったら、みんなが席を立って部屋へと戻っていった。それと入れ違いに理事長が帰ってくる。
「レンはなんて?」
「ん? 日向くんにそんな危険なものを持たせたら、葵ちゃんが消えることよりも世界が危機にさらされるって」
「……よし。送り迎えにおんぶしてもらって筋トレに付き合ってやろう」
「もうちょっと違うこと考えてあげなよ……」
そのあとオレも、一旦部屋に帰ってベッドへと傾れ込んだ。
「あー。……ごめん。ほんとごめん……」
でも、よく言えました。よく話してくれた。言葉にしてくれた。
「……よし。オレも、支度しよっと」
この目でちゃんと、あいつが助かる様子を見てあげないと。
そして、……あいつが幸せになる姿も。ちゃんと目に焼き付けておかないと。
――そして、時刻は6時前。大会議場にて、サラさん以外の全員が集まった。
「(カナタさん頑張って。きっと、大丈夫ですから)」
行きましょう、お互い。大事な人を、助け出すために。
それからオレらは車にそれぞれ別れて乗り込み、会場のチャペルへ『本物の参加者たち』よりも先に、潜入した。
参加者は、自分を隠すために仮面を着けるらしい。それは、警察の奴らもだ。
「入場の際に手持ち検査をするわよ。もちろん警察も。ここでの発砲は許されない。だって教会だからね?」
そう言ってるコズエ先生は、ガッツリ拳銃持ってますけどね。
「あ。見つかっちゃった?」
どうやら、彼女だけは発砲を許されたらしい。よくわからない基準だ。でも、余程のヤバい奴がいたら発砲をしなくてはいけなくなるのかも知れないから、用心しておかないと。
「それにしても。……いいんですか? シランさん」
「いいのいいの。お金なんて有り余ってるんだから」
その発言で、どれだけの人がこめかみに怒りマークを浮かべただろうか。シランさんは、ぶち壊すと言っても結婚式だからと、こちら側の参加者全員分のドレスやタキシードを用意してくれたのだ。
あとは各々、時間まではこの部屋で待機。好きな仮面を選んで、神父に変装したレンの掛け声とともに、みんなであいつに言葉を掛けていくという流れだ。その時に仮面を取って――。
「九条。ちょっと流れの確認がしたいんだが」
「ああうん。わかった」
そう言われて、オレはレンたちが別に待機室として使っている部屋へと向かった。



