あいつが、一人ずつに最後のメッセージを言っていた。その言葉に涙する人もいれば、つらそうに顔を歪める人もいた。
『ヒナタくん』
オレの番になって、息が詰まる。
……大丈夫だ。ちゃんと助けてやるんだから。これが、最後じゃないんだから。
『不器用にもほどがあります! どんだけ君に泣かされてきたか……』
はは。そうだね。ごめんごめん。もう、泣かさないよ。もう、泣かすような距離にいないからね。
『でも、ちゃんと守れたかな。嫌いって言ってごめんなさい。そんなこと、思うわけないじゃないですか』
わかってる。ちゃんとわかってる。
みんながちらりと、オレの方を見る。無視されていた時、そんなことがあったのかと。……嫌われるようなことを、オレがしてたんだから。ううん。今もしてるけど。
『……ハルナさん。もう一度ご挨拶、行きたかったです。わたしの代わりに、家族みんなでたくさん話してあげてくださいね』
何回でも行ったらいよ。きっとハルナも喜ぶ。ほんとに、……ほんとに。オレが助けたハナだよって。そう、教えてあげないとね。
そのあと、あの四人にもメッセージを言っていた。録音して正解。でもそう言うってことは、どこかできっと、四人が敵じゃないんじゃないかなって。……気付いてたのかな。
そして、あいつは『またね』は言わなかった。
「(信じてるのか信じてないのか、ほんとわかんないし……)」
そのあと、いつやってきたのか。やっぱり最後まで隠し通せなかったアイが、あいつに話をしてしまっていた。……ま、目的は達成したからいいことにしよう。
「シントさん。条件はこれで揃いましたよね」
「……ま、本当に反則だけどね。これは」
そうは言ってるけど、頬が緩んでる。
嬉しいんだ、それだけシントさんも。あいつが、口にすら出さなかった話をしてくれたから。
「日記を見せる条件が揃った。今はもうもしかしたら必要はないかも知れないけど、……頑張って途轍もない量から見つけ出したから、ちゃんと読んでね」
もう、細工はやめてくれた。それだけはほんとによかった。と言っても、同じく太陽の光を使った細工だったから、もう日記をずっと天日干しにしてたみたいだけどね。
これでみんな、ちゃんとあいつの口から聞いた。そして見た。後はもう、それぞれの判断に任せるだけだ。
「(……よくできました。あおい)」
後は任せて。
今までつらかったね。もう、大丈夫だからね。
「あいつを助けてくれる人たちは6時に。もう一度ここへ集まってください。全員が揃ってくることを、オレも祈っています」
――さあ。みんなで助けに行きましょう。
めちゃくちゃ強くて、実は本物のお嬢様で。馬鹿で、アホで、変人で。……元気で、笑顔がかわいくて、涙が綺麗で。誰よりもやさしい。
あの――……向日葵を。



