時刻は3時過ぎ。
「あ。……日向くんどこに行ってたの?」
「ちょっと電話してました」
部屋に帰ってきたら、すごい視線が一気にこちらを向いてきて気持ちが悪かったけど、理事長がオレに声を掛けてきてくれた。
「そっか。……それで? 葵ちゃん話しそう?」
「……使います」
「そうか」
「でも、声に出すって言ってくれたんで、なんとか」
「え? 電話の相手って……」
「それはいいとして。……政治家の方は」
「うん。今日はどうやら、こちらに来るみたいだよ」
「やっぱりね」
「雨宮先生から連絡が入ってね。どうやら警備の方もあちら側で固めるらしい」
「なるほど。……だったら、本当に作戦成功かも知れませんね」
本当に全員、捕まえられるかも知れない。
「それで、公安も人数出してきたから、初めは入り口と受付のところだけ。こちら側の公安に入れ替えて、全員を会場内にスムーズに入れるって話が来たよ」
「そうですね。全員取っ替えるのは返って怪しまれるけど、会場内がそんなに変わらないようなら、中に入ってしまえば袋の鼠だ」
「会場近くに待機できる部屋を取っておくから、そこに集合してくれって」
「場所はここね」と、理事長に場所を教えてもらった。チャペルの入り口から完全に死角になっていて、わからないような場所だった。
「流石は先生」
「あとは、……彼女の話を待つだけだね」
その言葉にオレは頷いて、アプリを起動。イヤホンを差して、あいつの話を聞いた。
「日向くん……」
理事長が、申し訳なさそうな顔をしていた。
……そんな顔しなくていい。オレがしたいからしてるんだから。
『ご馳走様でした!』
『……お粗末様でした』
「(……え。本当にオムライス食べたの? しかもレンの手作りを!?)」
耳から聞こえたのは、その会話。確かレンって、味音痴の料理下手じゃなかったっけ?
「(誰だ。犠牲になったのは。ていうかあいつよく食べられたな……)」
でも、すぐさま耳から。
『レンくん! 行きたいとこがあるんだけど!』
『え? ちょ、これ片付けてからじゃ……』
『だめだめ! 早くしないと、時間になっちゃうから!』
『え!? ちょっと! あおいさん!?』
そう言ってレンが引っ張られながら走ってる音が聞こえたから、そろそろだと理事長に合図して、みんなをまた集めてもらった。
「シントさん日記!」
「わかってる。準備してるよ。葵の話が聞けたらね」
どうやらそこは譲れないらしい。シントさんも、元ご主人に似て頑固なとこあるよね。



