『あ。不味い……』
どうしたんだろうか。電池切れ? いやレンかな。
『……怪盗さん。覚えてますか?』
ちょっと焦った感じでそう言われた。何をかと思ったら、自己紹介の件だった。
『賭けに負けたら、ちゃんと言います』
「……はい」
ごめんね。自己紹介するのは、オレじゃないんだ。
オレ宛にもちゃんと、【招待状】は来た。でも、きっと最後に、あんなこと言ったからだろうね。みんなのとはちょっと違った。浮き出た文字が。
いや、便箋に書かれた文字は一緒だし、もしかしたらみんなにも書かれてたのかも知れないけど。
【 信じて 待ってます 】
封筒の方に、ただ一言。オレの名前の上に、そう文字が出てきた。
それに写真も。みんなには、すごいいっぱい送ってた。それも、ちゃんと自分が写ってるやつ。小さい頃の写真。……オレにも入ってた。でも、たった一枚だ。
オレがみんなの家に回って回収したけど、いっかと思って残していた、ただ後ろ姿だけ映っていたもの。ハルナはもちろんバッチリ映っている。
……バレたのか? と、そう思った。でも、元からそんなに写真に写るのが苦手だから、きっと写真が手に入らなかったのかも知れないなと思った。あいつが送ってきたものはどれも、まだ小さな時のだし。
ぐるぐるまた考えていたら、耳から『だから……最後に。声が聞けてよかった』と、そう聞こえた。
「……あおいさん? 最後って……」
信じるんじゃなかったの? なんで、最後とか言ったの?
『それじゃあ、怪盗さん』
「待って! あおいさん……!」
ちゃんと答え、聞いてない! 信じてくれないと。オレは……っ!
『ふふっ。……また、会ってくださいね?』
「……っ。あおい――――」
向こうから、電話を切られてしまった。……危な。オレ今『レン』だったのに。
「(レンちゃん。空気読んでー……)」
最後まで、ちゃんと聞けなかった。でも、最後ってもしかしてあれかな。
……信じてるから。あいつの全部を、変えてあげられるから。怪盗として会うのが、最後ってこと?
「(……めっちゃ都合よく考えてるし)」
でも、言ってた。その前にずっと、『信じてる』って。――そして。
「……待ってて」
文字でも確かに。
オレは、『その言葉』を胸に、みんながいる部屋へと足を運んだ。



