すべてはあの花のために➓


「……と、いうわけなんだアオイ。別に、先生のことを疑ってるわけじゃないんだけど ――「ちょっと」……あいつは嘘つかないってわかってるから、多分合ってると思うんだけど」


 その日の夜、また2時になってすぐにアオイから電話が掛かってきて、スピーカーにしてみんなに話す。


『……うん。そうだよ。……合ってる』


 どこか元気がないようだけど、またあとで聞こう。今はまだ、聞きたいことがある。


「そうか。……だったらアオイ。ひとつ聞きたいんだけど」

『ん? 何?』

「あいつはどうか知らないけどさ、アオイは父親にアズサって言われたことない?」

『ええ!? なんで知ってるの!?』

「やっぱりか……」

『ちょっと待って。それはどういうことなんだい』


 今日ももちろん、理事長にも繋いでいる。


「……理事長、聞きたいことがあるんです」

『ん? 何かな』

「亡くなった病院が桜だから、きっとあなたもご存じかと思います。……道明寺梓という方。いえ、もしかしたら望月梓だったかもしれませんけど」

『……よく知っているよ』

「あっ、あの。理事長先生。俺、本当のことが知りたいんです」

『……その声は、藍くんかな』

「はい。……俺は家から、助かる病気だったのに、桜の無能な医師が母を殺したんだと聞かされてきました。でも、本当はどうなんでしょうか。俺は今、あの家のことは何も信じられないんです。どうか。真実を教えてもらえないでしょうか」

『……私が嘘を言う可能性だってある。それでも君は、私の話を聞くのかな』

「……先生は、そんなことしませんよ」

『何故わかる。何故そうと言い切れる』

「俺の勘です!」

『へ?』

「先生? 俺の勘は母譲りなので、結構当たるんですよ。……だから、教えてくれませんか?」


 しばらく続いた沈黙は、教えるのを悩んでいるのではないと思った。まるで、その話をする覚悟……勇気を、理事長がしているように感じて。


『……病院に来られた時にはもう、手遅れだった』