すべてはあの花のために➓


「……ひなた、くん……?」


 そう声を漏らしたのはシントさん。ま、名字は教えてなかったからね。


「……切ったのはわざとです」


 モミジとの時間が完全に逆転してる今、最後の一人には2時前に連絡を入れてもらうようにしている。


「オレのまわりには、やさしすぎるが上に残酷な人がたくさんいました」


 さっき声を聞いたんだ。誰の話かは、すぐにわかるだろう。
 そうしてオレは、以前カナタさんが話してくれた、あいつを捨てないといけなくなった本当の話をみんなに聞いてもらった。


「……確かに、カナタさんがしたことは間違っています。それは、本人もずっと後悔して後悔して、苦しんできました」


『だから、あいつの両親を嫌うなんてことをしないで欲しい』

 ……その言葉は、静かに飲み込む。判断するのはみんなだ。


「それからもう一人。これは、流石に今話はできないところにおられるので無理ですが、本人には了承は得ていますので聞いてください」


 もう一人はクルミさん。
 どうしてあいつを捨てないといけなくなったのか。そして、彼女が今囚われている家がどういうところなのか。モミジと被るところはあるけど、その話を聞いてもらった。


「カナタさんは今日、クルミさんを助けに行くため、結婚式には来られないんです」


 でも本当の理由は、二人がもし結婚式に来たとしても、あいつがパニックを起こすと思ったからだ。だから、取り敢えず結婚式で、あいつが今までしてきたことに関して助けてやる。それから、名前を呼んでやる。
 一度、両親にそういうわけがあったことを、ワンクッション入れて会った方がいいと。オレがそう思ったから、彼らは不参加なんだ。ま、混乱するのはあいつだけじゃなくて、みんなもしそうだからだけど。


「(また修行とか行かれても困るしね)」


 二人の話を聞いて、みんなは何とも言えないような顔をしていた。まあ、そうだろうな。事の発端が、そんなところから来てるとは誰も思わない。


「……最後に、もう一人」


 連絡が来た。
 今日は詰めに詰めてるから、みんなもうすでに軽くパニックかも知れないけど。でも、まだまだ頑張ってもらわないといけない。


『皆様初めまして。……桜の生徒会の皆さんも、先日は大変失礼しました』


 大画面に表れたのはアイ。みんな予想はついていたのか、そんなに驚きはしてなかったけど。でも、少し身構えてるみたいだ。


『俺は、道明寺の実の息子。……きっと、九条くんか理事長の方から話はあったかなと思いますが、父アザミ。それから母……今は亡くなりましたが、アズサの子ども。名前を、道明寺藍と言います』