すべてはあの花のために➓


 ――――日付が10日へと変わった頃。


「結婚式を利用したのには理由があります」


 最後の人から連絡が来る前に、このような形を取ったこと。それから、これからどうして欲しいのかを理事長に説明してもらった。
 ……モミジの話を聞いても、誰も欠けることはなかった。まあサラさんは、「本当ごめんなさい!」って謝ってこられたけど、彼女自体はあいつに会ったことはないんだし……それに。


「(コズエさんと同僚って……)」


 と言っても、一緒に働いたことがあるというわけではなく。五十嵐を出たサラさんは、自分が原因を調べようとしたみたいだ。それで猛勉強とかした……と言うか、意気込みがすごかったみたいで、公安部へと配属されたらしい。ざっくりと経緯はそんなふうに教えてくれた。

 どうしてサラさんが結婚式に来られないかというと、彼女は望月の方を任されたからだ。こんな近くに、公安って二人もいるもんかね。シオンさんにも、多分カナにもマサキさんにも話はしたんじゃないかなと思うけど、その他の人たちにはバレないようにしているみたいだ。

 でも何故かオレには嬉しそうに話してたけど。……どうしよ。そのうち暗殺とかされたら。


「(でも、もともと公安はゼロ(、、)の組織だ)」


 自分が公安だということも、ましてやその任務を公にしていいものじゃない。


「(……先生。サラさん……)」


 彼女たちが、どんな覚悟でオレに、そしてこの場の人たちに話したのかわからない。そして、このあとどうなるのかも、オレは知らない。
 ただの杞憂? そんなことはないだろうけど。流石に、オレにはどうすることもできない、か。

 今はただ、一つのことに集中しよう。彼女たちには、また話を聞かせてもらうことにして。


「この結婚式に乗じて、一番の大本を誘き寄せるためです」


 それは、白木院カンナ。
 その名前が出た途端に父さんが眉を顰める。あいつから、国務大臣になって欲しいって言われたんだってね。
 父さんはきっと、警察の上に国務大臣がいるから……もうハルナのような。犯人が特定できないような、そして証拠を隠すような警察を無くそうとしてるんだろう。もしかしたらあいつも、使えない警察をなくしてもらおうと思ったのかもしれないけどね。

 あいつは、最初から知ってたのかな。薬で狂わされた三人のことを。その原因が、国務大臣だったということを。ま、それはわからないけどね。
 今根源には、海棠のSPが、そいつにバレないようについてる。逃げようものなら確保する寸法だ。多分今日は、結婚式に来るだろう。

 誰かが、『大本以外にもいるだろう』と、そう言った。……少し、オレから話そうか。


「確かに義父義母、そして秘書が、あいつやカオル、その友達とレンに最低なことをしてきたことは事実です」


 でもその三人も、薬に狂わされた人たちだと話をした。


「……ちょっと、複雑なんですけど……」


 まずはアザミの妻、アズサさんについて。
 彼女は、とある家から逃げ出し、そしてアザミに拾われてそのまま道明寺を支え、そしてアザミを支えるために結婚。しかし、元から体が強くなく、子どもを産んでしばらくして他界。ミクリもまた彼女を愛し、そして彼女の死に嘆いていた。それからエリカは、結婚の予定だった男に捨てられ、狂う。
 それぞれが接触した時期を考えると、白木院カンナが一番怪しいのだと、そう話をした。


「……ですよね? カエデさん?」

「……? かえで?」


 流石に今日は、話をしてもらおうと思うので、出てきてもらいますよー。


「あー。……ソ、ソウデスネ」

「おとうさん……!?」


 誰の父か。まあきっとおわかりでしょう。カエデさん、いろんなところで出てきて大忙しだね。