すべてはあの花のために➓


 ――――7日、夜中。


『今日は、昨日コズエさんが話した兵器について、説明しますねえ』


 今日もモミジは話せそうにないみたいだ。
 それは、……本当にヤバい。モミジに話してもらわないと、あいつは全部自分がやったこととして話してしまう。


『彼女が作っていたのは、記憶に関する兵器ですう』


 そう言ってカオルが取り出したのは、錠剤と香水、そしてイヤーカフ。


『このイヤーカフに、見覚えはありませんかあ? 皇さん?』


 そんなニヒルな笑い方するから敵にまわすって言うのに……はあ。癖なんだろうな、多分。


『試作段階を着けてしまったシランさんは、一気に記憶がなくなり、廃人のようになってしまいましたよねえ?』


 そして、アキくんも着けた。それは段階を経てとのことだったから、急な記憶への障害は出なかったけど……ま、甘いものは好きにはなっちゃったけどね。


『あとはこれですねえ。この錠剤と香水に、見覚えはないですかあ生徒会の皆さん?』


 そう言った瞬間にみんなが頭を抱えて蹲り出す。……うん。いやそうなんだろうけど。


『なんで今思い出しちゃうんですか! コズエさんとキスしてないのにい!!』


 なると思った。
 ヨカッタネ先生。ほんと、もう少しで公開キスするハメになるところだったね。ていうか理事長の前とか嫌だろうな……。

 でも、みんなの両親は物凄く心配してる。大丈夫大丈夫。今思い出してるだけだから。


『はあ……。思い出しちゃったんなら、話続けますねえ……』


 そしてカオルは、家からあいつを追い詰めるような命令を受けていたことを話した。……めっちゃアカネが睨んでる。思い出したからだろうけど。
 その追い込み方としては、自分と同じ命令を受けたレン、そして“大切な友達”と一緒に西を使って、桜をほんの少し脅かすこと。あいつにも、カオルは直接追い込むようなことをしたと話した。


『まあちょっと襲っちゃいましたけどお』


 って言ったらみんなプッツンいってた。……怖い怖い。


『あとは文化祭と、クリスマスパーティー? それぐらいですかあ』


 どうして追い込まないといけないのか。それは、家が求めてるのはあいつではなくモミジだから。
 録音であったように、無理をするごとにあいつの時間自体は少なくなっていく。本当のところは一日の時間が削られるだけで、モミジが初めに決めたスパンは変わらないんだけど。
 できることならそんなことをしたくなんてなかった。でも、カオルも自分の大切な人を人質に取られ、板挟みにされて仕方なく、ほんの少しあいつを突いていたと。

 相談し、しっかり作戦を練りに練って、ギリギリの範囲でそうしていたと。カオルはそう話して終わった。


 ……きっと、みんなにとっては許せないことだと思う。たとえ理由があったにせよ。でも、その理由をあいつが知ったのなら、絶対にカオルを、レンを、アイを責めたりはしないだろうから。
 ただ悔しそうに、その時のことを思い出しながら握り拳を作っていた。