すべてはあの花のために➓


 ――――4日、夜中。


『生徒会の皆さんはお久し振りです。それから……お集まりの皆様、初めまして。月雪グループ次期当主、月雪蓮と申します』

「ユッキー!?」
「れんれん!?」

『あ。柊、氷川。……お前ら相変わらず小さいな』

「ユッキー?!」
「れんれん?!」


 おかしい。レンだったら大丈夫だと思ってたのに、二人のせいで軽く壊れた。


『すみません。ここのところ忙しくて』

「それはあとで教えて」

『あ。九条もいたのか。見えなかった』

「チカとオウリに比べたらデカいよオレ」

『私よりは小さい』

「進めて」


 睡眠不足が祟っておかしくなってるみたいだ。そうってことにしておくけど、……わざとだったら地面に埋める。


『生徒会の皆さんには、どうして私があおいさんの付き人をしているのかを話したことがあると思います』


 でも、それは真っ赤な嘘。
 まずは初めに、世間ではまだ存在していると思われている『月雪』は、もうすでに会社としては成り立っていないことを話した。多分知っていたのは、理事長とシランさんぐらいだろう。


『私の場合は、家族を人質に取られ、彼女の監視を命じられました』


 小さな頃からあいつの監視をしてきたレンにとっては、こんなことをみんなの前で話すことは嫌だったと思う。


『それからしばらくして、あおいさん自身も人質に取られ、カオルとともに家で命じられていたことをしてきました』


 それでもこうして話してくれたのは、レンが何よりもあいつのことを助けたいって思ってくれてるからだ。
 でもオレは、……オレだけは、本当のことを隠してる。最低だな。わかってるけど。


『今しているのは、あおいさんの部屋の片付けなど。家からは処分するように言われていますが、処分はせずシントさん宛に送ってますので、いずれ届くかと思います。大事に取っておいてあげてください』

「……俺?」

『はい。……きっと、あなたのことを彼女は心から信用していると思いますので』


 それが日記のことだろうと、みんなは思ったと思う。


「……わかった。大体ものは把握してるから、ちゃんと来たかどうかも確認してあげるね」

『え。は、はい……』


 執事だったからしょうがないけど。……知らない人から見たら、今のシントさんの発言、ただのストーカーだからね?

 取り敢えずレンはここまで。荷物をどうしようかと相談されたから、取り敢えずシントさん宛に送っとけってオレが言った。もしかしたら匂いは嗅ぐかも知れないけど、無くすようなことはまずないだろうし。