すべてはあの花のために➓


「電話が掛かってきたかと思ったら、いきなり『大学の授業休みとってね』とか言い出すから何事かと思った。……なあ日向。なんで俺に何も教えてくれなかったんだよ。カメラ教えてやったろ」

「え。何のこと?」

「お前いい性格してるよ」

「よく言われる」


 次はどうやら桐生家。ここも遠方からだ。


「すみませんナツメさん。仕事の方は……」

「大丈夫だよ。GWも近いし、有休取ることにしたんだ。こっちでできる仕事はしてるから」

「……いろいろとすみません」

「いいのよ。……やっとこの日が来たんだなと思ったわ」

「アヤメさん。その節は大変お世話になりました」

「ううんいいの。元気そうな顔が見られてよかったわ」

「……? 二人は何か知ってるの」

「あ。杜真は聞かされてないんだ。ぷっ」

「あ。杜真だけ除け者ね。ぷっ」

「あ。トーマ変態だね(ぶっ)」

「日向、最後変なので乗っかってくんな」

「トーマが変態なのは否定しないんだね」

「だって杜真変態だもんね~」

「そうよね~」

「父さん。母さんまで……」

「トーマに言わなかったのは、シントさんと一緒で下剋上を阻止するためだったんだ」

「は? どういうこと?」

「二人とも多分頭いいから、オレのしてるやり方とか知ったら多分、意地でも止めるんじゃないかと思って」

「あ。それはあるかもね」

「杜真、葵ちゃん大好きだものね?」

「え。二人は知ってるの?」

「二人はオレの駒だからね。……いろいろしてもらったけど、一番は看病かな」

「何してるの!? そこまでの仲なの!? いつの間に!?」

「ははっ、確かに看病だな」

「日向くん気にしてるの……?」

「そりゃ。お世話になったんで」

「気にしなくていいのよ。杜真なんか全然風邪引かないんだもん。ちょっと楽しかったわ」

「え。それもそれでどうかと思うんですけど」

「ふふ。……あ。日向くん、ちょっといい?」


 そう言われて、アヤメさんと二人で話すことに。


「どうかしたんですか?」

「間違ってたらごめんなさいね? お母さん……若葉ちゃんと、何かあった?」

「え。なんで……」

「ん? ……これはね、言わないでって言われてるんだけど」


 その言い回しに覚えがあって、胸がドクン……と鳴る。


「あなたの看病を頼む時に葵ちゃんが言ってたの。わけは話せないけど、今の日向くんには『お母さん』が必要だって」


 言葉が出なかった。……でも、あいつも知っていたんだろう。母さんが壊れていることを。


「…………っ」

「それからね? 紅李ちゃんも心配してたの。どうしたのかなって」

「アカリさんが……?」


 さっきは、何も言ってなかったのに……。


「電話をしたんですって? その時の様子がおかしかったから気にしてたわ。……若葉ちゃんと、何かあったんじゃないかって」

「……そう、ですか」


 確かにあの時は2月だったから、ちょっとおかしかったかも知れない。


「でも、今は大丈夫そうね」

「え?」

「あの時に比べたら、なんだかスッキリしてる。だから、……こっちに来るまでは心配だったんだけど、元気そうな顔が見られてよかったわ」

「アヤメさん。……ほんと。いろいろありがとうございます」

「いいのよ。杜真も応援はしてるけど、……きっとあなたには勝てそうにないものね」

「何のことですか?」

「あら。わかんないの? 珍しいわね」

「……?」

「あなたも大事な息子ですもの。何かあったら言ってきなさい? 応援してるわ」

「よくわかりませんけど……ありがとうアヤメさん」


 あの時。看病してくれたのがアヤメさんでよかった。


「(……あの。……ばかっ)」


 でも、そんなことを言われてると思ってなくて。それが、少しむず痒かった。