――――3日、夜中。
『どうもどうも~。先日は、桜の生徒会の方を驚かせてしまったみたいでごめんなさ~い』
カオルがそう言ったら、みんなが戦闘態勢に入る。よくわかんない人はどうしてそんなことをしているのかと首を傾げているけれど、シントさんだけは頭を抱えてた。
『あらま! ぼくってやっぱり敵っぽいですう? よく言われるんですよねえ』
「カオル。時間ないでしょ。進めて」
オレが間でそう言ったら、みんなが驚きを隠せないようだった。……あ。そっか。言ってなかったっけね。
『それでは改めまして。日下部製薬会社の御曹司……って言うのもなんか嫌ですね。あんなクソ会社潰れればいいんですよさっさと』
「 カ オ ル ?」
『あ、改めまして。日下部製薬会社の息子。名前を日下部薫と言います。お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます』
それからカオルは、自分の会社が薬の動きに深く関わっていることを話した。
『実際のところ、家族をここに人質に取られてもそんな最低なことをしている人たちどうだっていいんですけどお、……大事な友達を取られてしまって、ぼくも正直参っていました』
だから、家の命に背くことなどできなかったから、いろんなことをしてしまったと話した。
『きっと、お話があったと思うんです。雨宮コズエさんから。ここで味方を捜していたと』
それは、『自分を含めて三人いること』を話して、カオルはここで話を終えた。
「ひ~なた。お疲れー」
「キサ。アカリさんとサツキさんも」
「……あのね日向くん。葵ちゃんに力になるわって言ってみたんだけど、その時にはもう何かを決めているようだったの」
「あー。でしょうね」
「俺らは桜庭を使ってでもって言ったけど、……葵ちゃんが抱えてる問題は、俺らじゃどうにもしてあげられないくらい重い話なんだね」
「そんなことないですよ。じゃないと皆さん呼んでませんし」
「でも日向。あっちゃん、あんなところにいて大丈夫かな。……酷い目に、遭ってないかな」
「……まあ、酷い目に遭ってなかったら助ける必要なんてないんだけどね」
「日向くん。あたしたちは、関係者の人たちから話を聞くことしかできないの?」
「いいえ。一人一人に、ちゃんとできることがあります」
「それはまた後日、ってことになるのかな」
「……すみません。きちんと話を聞いてもらって、それでどうするのか皆さん一人一人に考えて欲しいんです」
申し訳なさそうに小さく笑うと、三人も同じように笑った。
「お前さん。抱えてないか」
「キク……」
後ろから頭に手を置かれたと思ったら、そう聞かれた。
「無理はすんな。……一番苦しそうな顔してるぞ」
「ま、事情知ってるしね。早く知って欲しいけど焦るわけにもいかないし、それにいろんな人の貴重な時間もらってるから」
「……なんだ。そんなこと気にしてんのかお前」
「え?」
「日向。ここに集まった人は、あっちゃんが大好きなんだよ」
「だから、あなたがそんなことを思う必要はないわ?」
「みんなで葵ちゃんを助けられるなら、少しの時間ぐらい平気だよ」
「……はい。ありがとうございます」
あいつが救った人たちのあたたかさに触れ、オレの方が、……あたたかい気持ちでいっぱいになる。



