みんないきなり集められて、思うことは多々あるだろう。でも、それも一気に説明をしたい。大きな部屋を提供してもらってるから、ひとまずは各自の荷物は置いて、そこへと集まってもらった。
「皆様。お忙しい中お集まりいただき、本当にありがとうございます」
流石に説明は理事長に任せることにした。理事長も、桜は代理の人に任せてこちら側へと来てくれた。
「この度集まっていただいたのは他でもありません。とある少女、今は名前を『道明寺葵』という子を助けるため」
そう切り出してから理事長は、自分が話せる範囲で話をした。
まずは『助ける』ということはどういうことなのか。それは、二つ意味があること。
一つは、あいつを『道明寺』から助け出すこと。もう一つは、『あいつ自身』を助けること。後者の方は理事長の口からは話すことができないから、本人に話してもらうことにして……。
「……実は、私たちのような業界では少し、噂になっている話があるんです」
前者の方は、理事長が話をしてくれた。
――道明寺。ここ最近になり、再び急成長してきた財閥。それまでは少し、傾きかけていたんだとか。それはハッキリとはわからない。
でも、その成長した原因として、薬が関係してるんじゃないかと。何故なら、薬の動きが少し変わったからだと。その流れに、道明寺が深く関わってるんじゃないかと。……そういう噂が跡を絶たない。
『それなら、警察に言えばいいんじゃないか』と、誰かが声を上げる。
「……残念なことに、警察もあちら側なのです」
決してすべてではないだろう。でも、もし言った警察があちら側なら……?
その場の全員の背筋が凍る。
それはそうだろう。なんでそんなことを知っているのか。バレたら大変だ。消されてしまうんだから。
「警察がバックについている道明寺には、ハッキリ言って私たちも手に負えないのです」
現に、道明寺に目をつけられた皇は痛手を負った。まあ、それは本人から話があるだろう。
「警察は道明寺側へとついています。ですが、公安はこちら側へとついてくれているのです」
『だったら安心だ』と、みんなの肩がふっと軽くなる。
証拠はもう、ほぼ集まっている。それもこれも、モミジがコズエ先生に事細かに説明して、証拠となる資料等を提出しているからだ。……でも、それだけではあいつを助けることはできない。
そこにみんなは首を傾げる。『公安が味方についていて尚、彼女はどうして道明寺から助けることができないのか』と。
それはできるんだ。道明寺からは恐らく助けられることができる。でもあいつ自身は、それじゃあ本当に助けたことにならないから……。
ここで一旦、オレにバトンタッチ。
「今から皆さんに聞いていただくものは、道明寺葵本人が、自分の言葉で自分のことを話したものです」
それは、クルミさんとカナタさんが聞いた、オレに話をしてくれたもの。
みんなも聞いていなかったものだ。内容は一緒だけど、……苦しそうに、最後は泣いてしまうほどのつらい話を、ここにいる全員に聞いてもらった。
「日向くん……」
本当は、理事長が代わりにしてくれると言ってくれた。
でも、これはオレの罪だ。だから、オレがきちんとする必要がある。
「どうしてあいつの口から聞かないといけないのか。今の話であったように、あいつが関わっている問題が大きすぎるからです」
それに、あいつ自身が抱えているものも大きい。
だから他人からではなく、あいつから直接聞いて、各々がどう捉えるのか。あいつを助けたいと思う人だけ残って欲しいと、そう伝えた。
「(本当は、みんなに残って欲しい……)」
でも、それこそオレの意見だ。それは言えない。それだけは、言っちゃダメなんだ。



