❀ ❀ ❀
「あとコズエ先生には、みんなに話す時オレがなんで知っているのかっていうのを話して欲しいんです」
「え? いいの? 言って」
「言うって言っても、オレがあいつのことを昔から知ってるっていうのは隠してください。絶対」
「九条くん……」
「お願いします。それだけはもう、“仲の良かった女の子のことを知ってる人”にしか、事情は話したくないんです」
こんなこと、誰も知らなくていいんだ。もう、わざわざ誰かになんて言わなくていい。
「……わかったわ。でも、彼女にも言わないつもりなの?」
「言いたくありませんよ。なんで女になってたのを言わないといけないんですか」
「ちゃんとわけを話せよ」
「まあ、話す時はちゃんとオレの口から話すよ。だから、誰も何も言わないでください」
話す時は、あいつがオレの賭けに勝った時だけ。……もう、言うつもりなんかないに等しい。
「じゃあ、そこは隠して、圭撫くんの件の時からでいいかしら。私がちゃんとあなたに接触したのはそこが初めだし」
「はい。お願いします」
オレ自体のことは、話さなくていい。話したとしても最小限で、……ほんの少しの嘘を交えて。『願い』の補助をしていたことも、もちろん言わなくていい。
オレがしていたのは、あいつを助けること。それが、どこからどこまでの範囲かなんてこと。……誰も、知らなくていいことだ。
――――――…………
――――……
「……日向は、そんなに前からいろいろしていたのか」
「してないしてない。オレがしたのは先生の手伝いだけで、何も聞かされてなかったよ。まあ公安っていうのだけは知ってたけど、オレがどうしてそんなことをさせられたのかを知ったのは去年の4月」
「みんなが知っての通り、私は生死を彷徨うような大怪我を負った。……まあそれはわざとなんだけど、だからわけをきちんと彼にも話してあげられなくて」
「……でも先生? どうしてそれがアオイちゃんと関係があるんですか? そんなの、もう……」
「間違って欲しくないのは、私は確かにあなたの先生だったってこと。あの時あなたに話した言葉ひとつひとつは、全部心からのものよ。あなたを使った、利用したということではないの。そうなってしまったのよ。……つらい思いをさせて、ごめんなさい」
「俺は、……もう大丈夫です。先生が元気なら、いいんです」
「……ありがとう。圭撫くん」
先生が上手く話を逸らせたけど、みんなももう気が付いている。あいつとカナの事件に、何か関係があること。
まあそれだけじゃないんだけど。先生がそういう話の持って行き方をして言ってくれたおかげで、みんなも聞くに聞き出せない状況になる。
「……なあ日向」
「ん? 何?」
きっと、『その話』ではないんだろう。ツバサがオレに話を振ってくる。
「あいつの結婚式。5月10日なんだろ」
「そういうところはよく気が付くのに、どうして暗号系は苦手なんだろうね……」
「お前はわかったのか」
「当然。まあ知ってたから、もしかしたらあいつが伝えたがっていたことがわかったのかも知れないけどね」
「……ひーくん。今、なんて……」
「ん? 『知ってたから』ってやつ? ……オレは先生と、あと理事長に聞いたからね」
「いやそれもあるし、ちょっと聞き捨てならないこと今聞いたけど。……取り敢えず、結婚式のこと」
「そっち? それはまあ、オレが先生たちから話を聞いた時に遡るんだけど……」
そしてオレは、あいつを助けるためにいろんなことをしてきたことを話した。
「あとコズエ先生には、みんなに話す時オレがなんで知っているのかっていうのを話して欲しいんです」
「え? いいの? 言って」
「言うって言っても、オレがあいつのことを昔から知ってるっていうのは隠してください。絶対」
「九条くん……」
「お願いします。それだけはもう、“仲の良かった女の子のことを知ってる人”にしか、事情は話したくないんです」
こんなこと、誰も知らなくていいんだ。もう、わざわざ誰かになんて言わなくていい。
「……わかったわ。でも、彼女にも言わないつもりなの?」
「言いたくありませんよ。なんで女になってたのを言わないといけないんですか」
「ちゃんとわけを話せよ」
「まあ、話す時はちゃんとオレの口から話すよ。だから、誰も何も言わないでください」
話す時は、あいつがオレの賭けに勝った時だけ。……もう、言うつもりなんかないに等しい。
「じゃあ、そこは隠して、圭撫くんの件の時からでいいかしら。私がちゃんとあなたに接触したのはそこが初めだし」
「はい。お願いします」
オレ自体のことは、話さなくていい。話したとしても最小限で、……ほんの少しの嘘を交えて。『願い』の補助をしていたことも、もちろん言わなくていい。
オレがしていたのは、あいつを助けること。それが、どこからどこまでの範囲かなんてこと。……誰も、知らなくていいことだ。
――――――…………
――――……
「……日向は、そんなに前からいろいろしていたのか」
「してないしてない。オレがしたのは先生の手伝いだけで、何も聞かされてなかったよ。まあ公安っていうのだけは知ってたけど、オレがどうしてそんなことをさせられたのかを知ったのは去年の4月」
「みんなが知っての通り、私は生死を彷徨うような大怪我を負った。……まあそれはわざとなんだけど、だからわけをきちんと彼にも話してあげられなくて」
「……でも先生? どうしてそれがアオイちゃんと関係があるんですか? そんなの、もう……」
「間違って欲しくないのは、私は確かにあなたの先生だったってこと。あの時あなたに話した言葉ひとつひとつは、全部心からのものよ。あなたを使った、利用したということではないの。そうなってしまったのよ。……つらい思いをさせて、ごめんなさい」
「俺は、……もう大丈夫です。先生が元気なら、いいんです」
「……ありがとう。圭撫くん」
先生が上手く話を逸らせたけど、みんなももう気が付いている。あいつとカナの事件に、何か関係があること。
まあそれだけじゃないんだけど。先生がそういう話の持って行き方をして言ってくれたおかげで、みんなも聞くに聞き出せない状況になる。
「……なあ日向」
「ん? 何?」
きっと、『その話』ではないんだろう。ツバサがオレに話を振ってくる。
「あいつの結婚式。5月10日なんだろ」
「そういうところはよく気が付くのに、どうして暗号系は苦手なんだろうね……」
「お前はわかったのか」
「当然。まあ知ってたから、もしかしたらあいつが伝えたがっていたことがわかったのかも知れないけどね」
「……ひーくん。今、なんて……」
「ん? 『知ってたから』ってやつ? ……オレは先生と、あと理事長に聞いたからね」
「いやそれもあるし、ちょっと聞き捨てならないこと今聞いたけど。……取り敢えず、結婚式のこと」
「そっち? それはまあ、オレが先生たちから話を聞いた時に遡るんだけど……」
そしてオレは、あいつを助けるためにいろんなことをしてきたことを話した。



