「……それは、本当のことなのか」
「うん、そうだよ」
「アオイちゃん、結婚するから学校を辞めたの?」
「いろいろ複雑な理由はあるけど、そう取ってもらってもいいと思うよ」
「そんなん、まるで……」
「あたしの時と一緒ね」
みんなが思っていたことを、キサが代表して言ってくれる。
「……なんで。あーちゃんは何も教えてくれないの」
「ひなクンは、それを知っていたんだよね」
「そうだね」
「どうして止めなかった」
「止めてあいつが、『じゃあやめる』って言うような奴だと思う? 言ったじゃん理事長が。複雑な理由があるけどって。あいつだって、したくないに決まってるでしょ」
「なんで日向はそんなに事情をよく知っている。そんなの、だいぶ前から知ってるようなものだろう」
アキくんがそう言った時、キサだけは一瞬目を見開くけど。そのことは黙っていておいて欲しいから、視線だけ送って黙らせる。
「それにもいろいろ複雑な理由があるんだよ」
「その理由はなんだ? いい加減もったいぶらずに教えろ。だからここに呼んだんだろ」
キクも、あいつを心配してるのには変わりないか。相変わらずゆったり喋ってはいても、顔はマジだ。
「――それは、私の方から説明させていただきます」
そう言って、ノックもせずに慌てて入ってきたのはコズエ先生。みんなも、まさか彼女が出てくるとは思わなかったみたいで目を見開いている。
「……な、んで。……先生、なんか知ってんのかよ」
「ええ。少なくとも、あなたたちよりは彼女のことをよく知っているわ」
「それはどうしてなんですか? それから、ヒナくんがよく知ってることも……」
カナデのその言葉に、一回ゆっくりと先生は瞬きをする。
「……雨宮梢という『先生』は最初からいないの。私は、警視庁公安部に所属をする者。先生の方が仮の姿でね。わけは今からちゃんと話すわ」
そんなことを話す先生の言葉に、みんなは驚きは隠せないようだったけれど、一生懸命必死についてこようとしてくれていた。
「九条くんがわけを知っているのは、私が彼に協力を求めたことが原因なの」
そして、ほんの少し。……ほんの少しだけ、オレが行動し始めた時間軸をずらした嘘をついてもらう。
「協力っていうのは……」
「……圭撫くん。あなたの願いの時に」
それだけで。もうみんなには十分意味が伝わった――。



