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「――結婚式を利用しようと思うんです」


 それは、みんなが集まって話せる最後の作戦会議でのこと。


「でも九条。そんなことをしなくても、名前はもうわかっているんだろう?」

「うん。でも、あいつを呼んだとしても、あいつ自身が助からないんだ」

「……今まで、させられてきたことね」

「はい。これからずっと、あいつはみんなに隠していくつもりだ。それじゃあ、ずっと苦しんだままだ。怯えたままだ」

「それはまあ、言いたいことはわかりますよ? それと、なんでアイさんとの結婚式を利用されるんですう?」

「結婚式を利用するのは、違う目的がある」

「焙り出すんだね」

「そう。待ちに待った機会なんだ。とうとうあいつが手に入る。絶対にその大本は、そこへ姿を現すよ。『この目で見届けよう』ってね」

『でも、現さなかったらどうするんだい?』

「大体目星はついてます。なので、取り敢えず見張っておくことにして、騒動と同時に捕まえたらいい」

『もしそこで無実を証明しようとしても、そいつに狂わされた三人が証言をすればいい』

「そういうこと。流石」


 でも、オレの予想だと絶対に現れる。だって、そいつにとったら『すべて』を手中に収められるかも知れない、最高の機会なんだから。


「それまでに、それぞれして欲しいことがあります」


 オレは、まずコズエ先生に、カナタさんから預かった資料を渡す。


「……これは?」

「あいつの父親。カナタさんからお預かりしたものです」


 パラパラと、先生はその資料を見て目を瞠る。


「言いたいことはわかったわ」

「よろしくお願いします。今回は、道明寺だけじゃなく望月の方にも打撃を与えないと、本当に助からないんです」


 それは、……本当にすべての人たちが。


「うん。必ずここもなんとかしてみせる。これだけの資料があれば、もう十分な証拠になるもの」

「それはよかった」

「でも九条くん。これに片がついたら、あまり時間が取れなくなりそうなの」

「……だったら、一緒に助けましょう。あいつの母親も、あいつと一緒の日に。そうすれば、二人はもう嘘をつかなくて済むんですから」

『それは……また豪快だね』

「大丈夫です。強力な味方がバッチリついてくれたので」

『ヒナタ。それってまさか……』

「うん。必要だったら言ってくれって言われてるから、どんどん扱き使おうと思う」

「君がそう言うなら、本当に強力なんだね」

「うん。そうだね」


 だってそこは、海棠よりも()なんだからね。


「アイとカオルは、桜に接触して欲しい」

「え? でも、それは……」

「大丈夫なんですかあ?」

「二人も動かないと怪しまれるし、あいつが追い込まれている状況にするには、道明寺と関わりのある百合が攻めてきているってことを、表向きに示す必要がある」

「……まあ、俺らの立場はそれで安定はするだろうけど」

「わかりましたあ。彼女にも、そのことは伝えていいんですよねえ?」

「追い込む材料として、存分に使って欲しい」

「はあい。彼女にとっては、いきなり崖っぷちのようになってしまいますけど、それも致し方ないですねえ」

「……うん。そうだね」


 二人もこうして、ようやく追い込む形に入れられるようになれば、家の信頼はグッと上がる。……問題は、本当を上手く隠せるかだけど。


「……俺、自身ないぃ……」

「アイ頑張って。カオルは……まあ心配なさそうですね。あと先生」

「まあ一回やってますからねえ」

「カオルと並べられるのは不愉快だわ」

「ま! コズエさんってば照れ屋さんなんですねえ」

「(……相変わらず飽きもせずよくやる……)」


 でも、アイもなんだかんだでなんとか堪えられそうだけど。


「……なんだ。ちゃんとするぞ」

「ポスター引き裂くだけで泣いてた奴がよく言う」

「泣いてない……というか、あの時は何も助けられる方法がなかったからだ。今は九条がいる。私は、あおいさんが助けられるなら嘘でもなんでもつける」

「……そ。じゃあ頑張ってね」


 そう自信たっぷりに言ってくるんだ。……期待、してるよ。