❀ ❀ ❀
「――結婚式を利用しようと思うんです」
それは、みんなが集まって話せる最後の作戦会議でのこと。
「でも九条。そんなことをしなくても、名前はもうわかっているんだろう?」
「うん。でも、あいつを呼んだとしても、あいつ自身が助からないんだ」
「……今まで、させられてきたことね」
「はい。これからずっと、あいつはみんなに隠していくつもりだ。それじゃあ、ずっと苦しんだままだ。怯えたままだ」
「それはまあ、言いたいことはわかりますよ? それと、なんでアイさんとの結婚式を利用されるんですう?」
「結婚式を利用するのは、違う目的がある」
「焙り出すんだね」
「そう。待ちに待った機会なんだ。とうとうあいつが手に入る。絶対にその大本は、そこへ姿を現すよ。『この目で見届けよう』ってね」
『でも、現さなかったらどうするんだい?』
「大体目星はついてます。なので、取り敢えず見張っておくことにして、騒動と同時に捕まえたらいい」
『もしそこで無実を証明しようとしても、そいつに狂わされた三人が証言をすればいい』
「そういうこと。流石」
でも、オレの予想だと絶対に現れる。だって、そいつにとったら『すべて』を手中に収められるかも知れない、最高の機会なんだから。
「それまでに、それぞれして欲しいことがあります」
オレは、まずコズエ先生に、カナタさんから預かった資料を渡す。
「……これは?」
「あいつの父親。カナタさんからお預かりしたものです」
パラパラと、先生はその資料を見て目を瞠る。
「言いたいことはわかったわ」
「よろしくお願いします。今回は、道明寺だけじゃなく望月の方にも打撃を与えないと、本当に助からないんです」
それは、……本当にすべての人たちが。
「うん。必ずここもなんとかしてみせる。これだけの資料があれば、もう十分な証拠になるもの」
「それはよかった」
「でも九条くん。これに片がついたら、あまり時間が取れなくなりそうなの」
「……だったら、一緒に助けましょう。あいつの母親も、あいつと一緒の日に。そうすれば、二人はもう嘘をつかなくて済むんですから」
『それは……また豪快だね』
「大丈夫です。強力な味方がバッチリついてくれたので」
『ヒナタ。それってまさか……』
「うん。必要だったら言ってくれって言われてるから、どんどん扱き使おうと思う」
「君がそう言うなら、本当に強力なんだね」
「うん。そうだね」
だってそこは、海棠よりも上なんだからね。
「アイとカオルは、桜に接触して欲しい」
「え? でも、それは……」
「大丈夫なんですかあ?」
「二人も動かないと怪しまれるし、あいつが追い込まれている状況にするには、道明寺と関わりのある百合が攻めてきているってことを、表向きに示す必要がある」
「……まあ、俺らの立場はそれで安定はするだろうけど」
「わかりましたあ。彼女にも、そのことは伝えていいんですよねえ?」
「追い込む材料として、存分に使って欲しい」
「はあい。彼女にとっては、いきなり崖っぷちのようになってしまいますけど、それも致し方ないですねえ」
「……うん。そうだね」
二人もこうして、ようやく追い込む形に入れられるようになれば、家の信頼はグッと上がる。……問題は、本当を上手く隠せるかだけど。
「……俺、自身ないぃ……」
「アイ頑張って。カオルは……まあ心配なさそうですね。あと先生」
「まあ一回やってますからねえ」
「カオルと並べられるのは不愉快だわ」
「ま! コズエさんってば照れ屋さんなんですねえ」
「(……相変わらず飽きもせずよくやる……)」
でも、アイもなんだかんだでなんとか堪えられそうだけど。
「……なんだ。ちゃんとするぞ」
「ポスター引き裂くだけで泣いてた奴がよく言う」
「泣いてない……というか、あの時は何も助けられる方法がなかったからだ。今は九条がいる。私は、あおいさんが助けられるなら嘘でもなんでもつける」
「……そ。じゃあ頑張ってね」
そう自信たっぷりに言ってくるんだ。……期待、してるよ。
「――結婚式を利用しようと思うんです」
それは、みんなが集まって話せる最後の作戦会議でのこと。
「でも九条。そんなことをしなくても、名前はもうわかっているんだろう?」
「うん。でも、あいつを呼んだとしても、あいつ自身が助からないんだ」
「……今まで、させられてきたことね」
「はい。これからずっと、あいつはみんなに隠していくつもりだ。それじゃあ、ずっと苦しんだままだ。怯えたままだ」
「それはまあ、言いたいことはわかりますよ? それと、なんでアイさんとの結婚式を利用されるんですう?」
「結婚式を利用するのは、違う目的がある」
「焙り出すんだね」
「そう。待ちに待った機会なんだ。とうとうあいつが手に入る。絶対にその大本は、そこへ姿を現すよ。『この目で見届けよう』ってね」
『でも、現さなかったらどうするんだい?』
「大体目星はついてます。なので、取り敢えず見張っておくことにして、騒動と同時に捕まえたらいい」
『もしそこで無実を証明しようとしても、そいつに狂わされた三人が証言をすればいい』
「そういうこと。流石」
でも、オレの予想だと絶対に現れる。だって、そいつにとったら『すべて』を手中に収められるかも知れない、最高の機会なんだから。
「それまでに、それぞれして欲しいことがあります」
オレは、まずコズエ先生に、カナタさんから預かった資料を渡す。
「……これは?」
「あいつの父親。カナタさんからお預かりしたものです」
パラパラと、先生はその資料を見て目を瞠る。
「言いたいことはわかったわ」
「よろしくお願いします。今回は、道明寺だけじゃなく望月の方にも打撃を与えないと、本当に助からないんです」
それは、……本当にすべての人たちが。
「うん。必ずここもなんとかしてみせる。これだけの資料があれば、もう十分な証拠になるもの」
「それはよかった」
「でも九条くん。これに片がついたら、あまり時間が取れなくなりそうなの」
「……だったら、一緒に助けましょう。あいつの母親も、あいつと一緒の日に。そうすれば、二人はもう嘘をつかなくて済むんですから」
『それは……また豪快だね』
「大丈夫です。強力な味方がバッチリついてくれたので」
『ヒナタ。それってまさか……』
「うん。必要だったら言ってくれって言われてるから、どんどん扱き使おうと思う」
「君がそう言うなら、本当に強力なんだね」
「うん。そうだね」
だってそこは、海棠よりも上なんだからね。
「アイとカオルは、桜に接触して欲しい」
「え? でも、それは……」
「大丈夫なんですかあ?」
「二人も動かないと怪しまれるし、あいつが追い込まれている状況にするには、道明寺と関わりのある百合が攻めてきているってことを、表向きに示す必要がある」
「……まあ、俺らの立場はそれで安定はするだろうけど」
「わかりましたあ。彼女にも、そのことは伝えていいんですよねえ?」
「追い込む材料として、存分に使って欲しい」
「はあい。彼女にとっては、いきなり崖っぷちのようになってしまいますけど、それも致し方ないですねえ」
「……うん。そうだね」
二人もこうして、ようやく追い込む形に入れられるようになれば、家の信頼はグッと上がる。……問題は、本当を上手く隠せるかだけど。
「……俺、自身ないぃ……」
「アイ頑張って。カオルは……まあ心配なさそうですね。あと先生」
「まあ一回やってますからねえ」
「カオルと並べられるのは不愉快だわ」
「ま! コズエさんってば照れ屋さんなんですねえ」
「(……相変わらず飽きもせずよくやる……)」
でも、アイもなんだかんだでなんとか堪えられそうだけど。
「……なんだ。ちゃんとするぞ」
「ポスター引き裂くだけで泣いてた奴がよく言う」
「泣いてない……というか、あの時は何も助けられる方法がなかったからだ。今は九条がいる。私は、あおいさんが助けられるなら嘘でもなんでもつける」
「……そ。じゃあ頑張ってね」
そう自信たっぷりに言ってくるんだ。……期待、してるよ。



