あいつが出ていった生徒会室は、やっぱりどんよりしていた。それを払拭するように、オレは大きく大きく伸びをする。


「……さてと。やっと行ったか」

「ん? どしたんヒナタ」

「いやー。オレよく頑張った。ほんとよく頑張った。ね? 褒めて褒めて」

「ん? 何のことー?」


 誰にも知られてない。だって、バレないようにしてきたんだ。……でも、まあ……。


「……日向。もうすぐだぞ。5月10日」

「わかってるわかってる」

「ん? 何の話なんだ翼」

「いや、俺も知らねえけど……」

「……日向。教えてくれるの?」

「うん。……キサ。今までごめんね? あ、それからみんなも」


 二人は何となく知っている。オレが、何かを知っていること。それから、何かをしていたということを。


「ん? ひーくん。何が?」

「ひなクンに謝られるようなことなんて、おれらはしてないよね?」

「うん。だってみんなに気づかれないようにしてたからね」


 ――さあ。今からが、本当のゲームだ。
 もちろん、道明寺が相手でもあるけどね。ま、あいつも道明寺か。(仮)だけど。


「いやーもうさ、オレって嘘つくの嫌だからさ? ずっと演技してて心が痛んでたわけよ」

「嘘つけ。そういう類いのやつ一番好きだろうが」

「でもよヒナタ、演技? ってなんだよ」

「演技って言ったら演技だよチカ。そうと見せかけることでしょ?」

「……ヒナくん? 何を、言ってるの?」


 ――さあ。ぶっ壊してやろう。あの、めっちゃくちゃ頑固すぎるほどの。分厚い分厚い鉄壁を。


「オレの演技もなかなかのものだったでしょ? これでやっと肩の荷が少し降りるよ」

「……あれか。チカがリスト破って泣いた時の」

「いや、あれはガチで泣いてた(鼻ぶつけて)」

「だったらなんだったって言うのひーくんっ!」


 ――さあ行こう。これでやっと、何もかもが終わる。


「それじゃあみんな、行こっか」

「ど、どこに行くの? ひなクン」


 ――そりゃ、もちろん。


「理事長室だよ」


 言わせてあげるよ。絶対に。


「……みんな、覚悟はいい」


 必ず。あんたが言いたいこと。絶対。





「あいつを助けに行くよ」


 ――……『ただいま』って。家族たちにさ。