――ガシャンッ!


「はあ。……今度は何割ったの?」


 行きたくないけど、行かないといけない。


「母さんどうし――びゅんっ!! …………たの」


 今度はタマネギになってる。トマトさんよりは殺傷力あるかもね……って、ねえよ。


「……なんであんたがここにいるの」

「……うん。ごめんね」


 この頃は、時々ちゃんと日本語がわかる。


「なんでここにあんたがいるの! 返して!」

「……うん。ごめん」


 だって思い出してるから。この時期は、いつも。


「返して!! 返してよ!!」

「……ごめんね、母さん」


 オレの判別だってついてる。
 だから言うんだ。いつも、……いつも。


「はるちゃんを!! 返せよおお!!」

「……うん。そうだね。返せたら、返したいんだけど」


 だから、そうやって言うんだ。
 お前のせいで死んだんだって。なんでお前は、こうやって生きてるんだって。……なんで、死ぬはずだったオレが、生きてるんだって。


「返してよ!! とうせいさんを!! つばちゃんを!!」

「……ご、めん」


 オレのせいで、家族がバラバラになったんだって。そう、言ってくるんだ。
 ……でも、言ってくるだけなんだ。


「あはははははは!!」


 暴れるかと思ったら、絶対にオレは傷つけない。危ない時もあったから、わざとかどうかなんてわからないけど。
 でも、……投げ付けられた言葉にオレは、おかしくなりそうだった。


「……いっその事、ひと思いにやってくれたら楽になれるのに」


 ただ、名前は呼ばれない世界。オレがいない世界でオレは、オレの存在を否定され続けてきた。


「……あーあ。ほんと、……壊れそうだよ」


 きっと、あいつの存在がなかったらオレは、とうの昔に命を落としていただろうな。
 ……あいつは今の。オレの、生きる糧だから。