それから、新歓の場所が決まったところで、内容を詰めていった。無視することは、もうやめてくれないみたいだったから、勝手にオレが一人でこいつと会話が成立してるって思うことにした。……うん。そう思ったらちょっと気が楽だ。
そしてようやく、あいつはタイムリミットを伝えた。
みんなは、怒りのようなものをあいつへと向ける。……いいや、あいつじゃない。あいつの家へと向けているんだ。でも、それをあいつは悔しそうに、申し訳なさそうに受け止めていた。
「ひーなた」
「ん? ……何キサ」
今は、新歓のしおりのそれぞれの担当ページを作成中だった。
「……このまま、あっちゃんと話もしてもらえないままでいいの」
「何言ってんのキサ。ちゃんと会話してるじゃん」
「おう……。そこまで重傷になってしまったのか」
「……できることならね。でも、あいつが話したくないんならいいんだ。無理強いしたくない」
「日向……」
「だからねキサ。あいつが笑えるようにしてやってよ。オレは、あいつが笑ってたらそれが一番嬉し」
小声でそう会話をしていたら、ツバサと話をしていたらしいあいつがいきなり吹き出した。
「……ど、どうしたんだ!? あっちゃんも壊れたのか?!」
「ちょっと、『も』ってどういうこと」
でも、あいつの仮面は完全に剥がれ、そして泣きながら笑ってた。
「(……よくわかんないけど、よくやった! 流石は兄貴!)」
でも、その何かしでかしたツバサも、何が起こったのかはわからない様子。
どうやら残り五日間の間、あいつは仮面を外して、素の自分でみんなと過ごしたいらしい。……きっとそのきっかけを、ツバサがあいつにしてやったんだ。
「(……ま、仮面は外しても、話はしないんだろうな)」
そういうつもりで、あいつもレンに「よろしく」と言ったんだろう。言うつもりなんかないと。抵抗はしないと。……そういう意味で。
ちらり、レンがオレの方を見てくる。まあ、あいつが勝手にそれを着けてただけだし、話さなければ済むことだ。オレは、小さく頷いておいた。
いつものあいつの様子に、みんなも嬉しそうにしてた。ここぞとばかりに、まずは交流会のことを怒濤のように聞いていたけど、あいつは本当のことを、嘘をなるべくは言わないよう言葉に気をつけて話していた。
「(あ。そういえばシントさんから連絡来たっけ……)」
それは文句の電話だったけど。
どうやら、交流会のことをアキくんから聞いたらしい。もちろんこれからどうして行くのかっていうのは、シントさんに話してたけど……。
『アキにまで嘘つくようなこと俺したくないんだけど……?!』
嘘は言いたくなかったみたいだから、コーヒーを零して動揺してたように見せたらしい。なかなか上手いな。
文句は言われたけど、これもあいつのためだって言ったらあっさり引いた。……ま、メイドの写真は盾に取ったけど。



