すべてはあの花のために➓


 それから次の交流会の話になった。でも、表向きではあいつは夏にはもう桜には居ないことになっている。でも……。


「……わたしはまだ、諦めてはいないので」


 アイが問いかけたら、小さな声だったけどあいつはそう答えた。そうしたらアイが、嬉しそうな、泣き出しそうな顔になってたから、慌ててカオルがフォローに入ってくれた。


『アイ。頑張って。もうちょっとだから』

『ご。ごめん……』


 視線でそう会話をしたあと、彼らはあいつを連れて帰っていった。


「(うーん。それにしても、無視は健在だ)」


 それはそれでやっぱり寂しいし、ここからいなくなってしまう前に、一度でいいからオレと会話を、何でもいいからして欲しい。……あ。できれば名前も呼んで欲しいな。あ。でも、目だけ合わせてくれるだけでもいいかも。
 ほんと、下僕のくせにいい度胸だよね。ご主人様の話も聞かないなんて。……ほんと。オレの方こそ、いい身分だよね。あいつを苦しめて苦しめて。

 ああ。……また、ぐるぐるなる。そう思いながら書いていたリストは、横から掻っ攫われた。……酷い。せっかくいい案浮かんだのに最後まで書けなかった。しかもビリビリに破かれたし。
 でも、あいつを追い込むことは追い込んでる。でも、誰かに話すとは思えない。だから――……。


「……いいよね、みんな」


 みんなにも、もう少し我慢してもらわないと。


「あいつと話できるんだもん。……いいな」


 話はできる。でもきっと、『そういう話』をあいつはもう誰にもしない。


「オレだって、あいつと思い出、作りたいのに……」


 だからみんな。もう少しだ。もう少しでみんなのこと、ちゃんと解放してあげるから。


「だってあいつ。もうすぐお休みするんでしょ……?」


 だから、……もう少しだけオレに、気づかないで。


「オレは。……あいつがどんな家の奴だろうと、誰が本当の子供だろうと。あいつと。……話したいんだって」


 そしてその時が来たら。ちゃんとあいつのことを、あいつの気持ちを。わかってやって。


「思い出。……作ってやってよ。あいつと。……たくさん話してやってよ」


 だからそれまでは、オレにはできないことしてあげて欲しいんだ。つらいと思う今。すっごい。だから、睡眠時間を削ってまでここへ来てたんだ。なんでかなんて。そんなの……。


「ちゃんと。……泣かせてやってよ。笑わせてやってよ。……あいつの仮面以外の顔。……見させてよ」


 少しでもみんなと一緒にいたら、あいつが幸せだからじゃん。
 だから、あともう少しだけ。みんなも不安だろうけど。勝手にオレに動かされてることなんて知らないんだろうけど。

 どうか。……お願いだから――!!