「はあ。……それで? 何があったの」
「……別に」
姉《キサ》がオレから何か聞き出そうと、みんなを散らして話しかけてくる。
「何もないわけないでしょ。……どうしたのあっちゃん。いつにも増して最強だよ? 近づけないよ?」
「そう? オレは近づけるよ」
「近づいても相手にされてないでしょ」
「……そうだね」
相手にされない、か。
きっとあいつは、オレが一番この方法が傷付くって知ってるからそうするんだろうな。実の母親の中から、オレは存在を消されていたんだから。
「……また、なんかしたの?」
そう言うキサは、きっとクリスマスパーティーでのことも気にかけている。……それでも。
「オレの目的は変わってない」
「……これも、あっちゃんを助けるためだっていうの?」
「うん。これは、必要なことなんだ」
オレが考えるあいつの幸せに、これは欠かせないことなんだ。
……あいつの、幸せ……? 違うか。違う違う。いざとなった時、オレが傷付くのが怖いからじゃん。そうじゃん。
「オレに。……っ、必要なんだ」
「日向……」
それ以上キサは何も聞いてこなかった。
ただ、俯くオレの頭を。ただ、……やさしく撫でてくれた。
それから、異常に話しかけるのはもうやめた。
……自分が傷付くのが怖い? 馬鹿げてる。そうだけど、……本当、馬鹿だ。
「(あーあ。どうしてオレ、こんな拗れてんだろ)」
それに、やっぱりキツかった。だから、無視されるのも怖くて、そんなにたくさんは話しかけらんなかった。
「(ダメだ。このままじゃ。頑張れオレ。これぐらいじゃ、あいつは頑固なまま。変わらないままだ)」
決めたじゃないか。自分がどうなったって、あいつを助けることには変わりないんだって。
だから、レンがしたこと以上に、オレはあいつを追い込めばいい。……してきたじゃん。今までいっぱい。意地悪したじゃん。それと一緒だって。
そう言い聞かせても、なかなかその線を越えられなかった。……おかしいな。こんなにもオレ、臆病だったっけ。
新歓のアンケート回収日の放課後。あいつは生徒会室にいなかった。レンは来てなかったけど、コズエ先生は休みだと言ってた。だから、家で何かさせられてるのかと思ったんだけど……。
「……ねえ。なんであいつ、帰ったかわかる?」
二人は朝、学校へ来ていたみたいだ。それで、新歓の候補を各クラスに渡しに行って……。
「ふらつき……って。あいつ、顔色悪かったんじゃないの」
レンが、あの女子以下の体力しかないレンが。あいつを負ぶって帰った……?
顔色は、化粧をしたらいくらだって誤魔化せる。それにまた、モミジから連絡は来なかった。
「……ふざけんな」
倒れるまで、どうして自分のことを労ってやれないんだ。
……わかってる。少しでも長くみんなといたいんだろうなって。わかってる。……っ。わかってるからッ!!
「……ちょっと今、話しかけないでくれる」
「は、はいっ!」
この方法しか思いつかなかった自分自身に腹が立つ。
……なんでもっと。あいつの気持ちを考えてやれなかったんだろう。なんでもっと。あいつが傷付かない方法を、思いついてやれなかったんだろう。
今となってはもう遅い。それは、ずっと前から思ってる。それでもいいんだって。オレが、自分に言い聞かせてきたんだ。
……でも、間近でそれを知ってしまったら。今までオレは。……――何を必死にしてきたんだ。



