『は~い! 久し振りだね!』
「元気そうだね」
電話を掛けた相手はユズ。今度あいつと一緒にチョコを作ると聞いたからだ。
『大丈夫だった? あれから何も連絡なかったから、録音ちゃんと聞こえたのか心配だったんだけど……』
「え? 録音聞いてないし」
『何のために頑張ったと思ってんの……!?』
「あいつのためでしょ? ありがとう」
『いや、うん。間違っちゃいないけど……』
「最近はどう? まだ傷心?」
『ほじくり返さないでよ……!』
「ていうってことは、まだカナ好きなんだね」
『うーん。……好きなんだけど、応援したい!』
「……そ。きっと喜ぶよ」
『うんっ』
「それでね? ユズにちょっと、話しておきたいことがあって」
それからユズに、あいつがわけあって仮面を着けていることを話した。
『それも、あたしが録音したことと何か関係があるの?』
「うん。だから、わけを聞いてもなかなか教えてくれないと思う」
『うーん。まあよくわかんないけど』
「それでね? あいつが自分のことを話せるように、それとなく促して欲しい」
『むずっ……!?』
「できなかったら別にいいんだ。あいつがちょっとでも笑えてたらそれでいいから」
『ひなくん?』
「……ちょっと、さ。仕方なかったんだけど、あいつのこと傷つけたんだ」
『え』
「しょうがないんだ。……助けるには、オレは、こうするしかできなくて」
『ひなくん……』
「ごめ……。あいつのこと、最近まともに見てなくて。……会って、なくて」
『……心配、なんだね』
「それでも。オレはまた、傷つける道を選ぶから」
『ええ……!? ちょ。ひ、ひなく』
「じゃあユズ。なんでもいいから頼んだ。録音はいいから。それじゃ」
そうやって、ユズが何かを聞いてくる前に、さっさと通話を終わらせた。……聞かれたって。オレも答えられないんだ。
「……どうかしてるよ」
あんなこと、口走るなんて。
「……しょうがないじゃん。不足してるんだから」
話してすらない。会ってすらない。見てすらない。声すら聞いてない。
「あー。……壊れそう」
欲求って意味でもあるけど、もう2月に入ってしまった。



