茶番はさておいて。シントさんを交え、もう一度これからしようとしている作戦の話をした。
「はあああー……。君は。……まあ。……はあー……」
作戦を話し終わったあと、電話は終えまたシントさんと話をする。
「そういうことなんで、シントさんもその時に供えて、すぐに対応できるよう準備しておいてください」
「君って子は……。まあ君につくと決めた以上、そうするより他にないかな……」
「……すみません。オレには、これしか考えられなかったんで」
「ううん。別に謝ることじゃないけど……まあすごいなと思って」
「そうですか?」
そう言ったら、シントさんが小さく笑った。
「慎重なくせに、時々豪快で、最後はめちゃくちゃ思い切るところ。葵に似てるなって、ちょっと思ったんだ」
「え。そうなんですか?」
「願いを叶えてる時でもそうじゃなかった? 君の時はもう俺は忘れてたから、どうなったかは聞いてないけど」
「……そうですね。確かに、最初は慎重だったかも」
「でしょう」
「それで、……豪快にビンタ食らいましたけど」
「え。び、ビンタ……?」
「ははっ。……はい。それはもう、めちゃくちゃでしたよ」
その時のことを思い出して、笑いが出た。そんなオレを見て、シントもさんも安堵の笑みを浮かべていた。
「本当は今、本人と直接話をしてもらおうと思ってたんですけど……」
「……さっきも言ってたけど、本人って……」
オレは、シントさんに、モミジと初めて会った時の会話を聞かせた。もちろん『そういう会話』は編集済みだ。……じゃないとシントさんに殺されるから。
「なので、あいつが消えるようなことはありません。その条件を満たさない限り」
「結婚と20歳。無理はしても時間を削るだけだから、完全に乗っ取るわけじゃなくて、時間帯が逆転するだけ、か」
「あと、その無理についてなんですけど」
「望月の家系の問題?」
「はい。体が弱い分、そういうトレーニングをする必要があった。わざとそういう条件をつけたのは、あいつの体を強くしたかったからみたいです。そこでたまたまめちゃくちゃ強いミズカさんに拾ってもらっちゃったもんだから、……ものすっごい強くなっちゃったみたいですけどね」
「はは。そうなんだよ。結局葵には勝てないまま解雇されちゃったな~」
そう言ってるシントさんは、口調はおちゃらけてるものの、表情はやっぱり寂しそうだった。
「でも、シントさんも交えて話ができてよかったです」
「……日向くん。葵は? 体調とか……」
「体は冷たくなってます。本人も自覚はないみたいですね」
「そうか。……だったら、何も知らない葵にとっては怖いだろうね」
「いいんです、これで。……これで、いいんです」
「……日向くん」
「シントさん。その時になったら、もう一度本人から話があると思います。……だから、ちゃんと聞いてあげてください」
「殆ど君から聞いたようなものだけど。……うん、もちろん。その時に」
「はい。……ありがとうございます」



