すべてはあの花のために➓


「……でも、信じられないんだけど」

「あの四人にもいろいろ事情があるんですよ」


 それからシントさんに、その四人がどうしてそうせざるを得なかったのかを話した。


「……ねえ。ちょっと聞きたいんだけどさ」

「なんですか?」

「今の話を聞く限り、なんか全部日向くんがみんなに指示してるように聞こえる」

「……まあ、してますからね」

「……マジ?」

「大マジです」


 今でも思う。ここまでこうしてオレなんかを信じて……。ほんと、みんなお人好しすぎるよね。


「ま、一番扱き使ったのは理事長ですけど。シントさんには、絶対にオレのこと言うなって言ってたんで」

「そりゃ知らないわけだよ」

「代わりにシントさんの情報はオレに筒抜けですけどね。理事長はばっちりオレの駒なんで」

「……ねえ。その駒ってさ……」

「ああ、聞きます? オレが集めた駒の数々」


 それはミズカさんたちに始まり、自分の父親でさえ揃えてしまったオレの、……大切な(ヒト)たち。


「偉い。朝倉先生は入ってないんだね」

「あいつはキサとトーマにチクった前科があるので、最後まで駒にはしません」


 ……扱いが酷い? いやいや、口が軽いあいつが悪い。今頃くしゃみしてるだろうけど。


「それにしても君は、……はあ。本当、すごいな」

「どうも」


 でもきっと、シントさんがオレの立場だったら、きっとおんなじことをしてたと思う。彼の場合は、動けなかったから。調べられる範囲も決まってたし。


「望月クルミさん。あいつの母親にも会ってきました。それから、父親のカナタさんにも」

「……!! 日向く」

「まだ話は済んでないです。……もう少し、聞いてくれませんか?」

「……わかった」


 物凄い勢いで立ち上がったシントさんを、何とかそう言って止める。……今のうちに、カエデさん呼んでおこうかな。


「それじゃあ……これ。聞いてください」

「……? 何?」


 そう言ってオレは、シントさんにイヤホンを渡した。
 ……あ。カナタさんに録音してたこと言うの忘れてたけど……ま、いいよね。


「オレの口からじゃ信用してもらうのは難しいと思ったんで、ご本人から、直接その時の話をしてもらいます」


 それから二人がどうしてあんなことをしてしまったのか。その話の録音データを、シントさんに聞いてもらった。


「………………」

「お会いしたことないと思うんで、信じるかどうかはシントさんに任せます。お二人にも会って、きちんとあいつと話をすると約束も取り付けてきました」

「……そっか。……うん。そっかあ……」

「(シントさん……)」


 きっと自分が、ここまで辿り着きたかったんだろうな。