「お前は、アオイちゃんを助けるためにそんな危ないところにまで手を出そうとしてんのか」
「……初めは、あいつだけを助けられれば、それでオレはよかったんですけどね」
「ヒナタ……」
それは、いつの間にかこんなに多くの人たちを巻き込んだ大きな話になっていた。
「(それでもオレは……)」
助けてやりたいって、思ったんだ。何でかなんて、そんなの決まってる。
……あいつなら。あおいなら、そうするからに決まってるからだ。
「確かに、危なかった時期はありました。でも、今はもう守りに入ってます。十分、相手の足下を掬う準備はできたんで」
「……そうか」
そう言ったら、カエデさんが立ち上がって、オレの頭に軽く拳骨を入れた。
「無茶しすぎだ。信じてたんならもっと頼れ。大人を。俺を」
「……はい。すみません、でした」
信じてた。それは本当だ。でも、信じ切れないところもあった。
それは、あいつのことを知ってからどうなるかなんて、わからなかったからだ。
「何かあったら言え。絶対だ」
「はい。……ありがとうカエデさん」
でも、……きっと大丈夫だ。だって、オレのまわりにいる人たちは。みんなやさしすぎる人たちでいっぱいなんだから。
「それじゃあ、夕飯の準備お願いしてもいいですか?」
「は?」
「あとあと、今日は泊まっていくのでアキくんには絶対にバレないようにしてください」
「へ?」
「そうだ。夜食もお願いしていいですか? ちょっと、彼と話したいことがあるんで」
「……あいつも駒にするのか」
「あんな駒いらないです」
「はへ?」
「あんな人駒なんかにしたら、オレの方が飲み込まれかねませんから。そうされたら何もかもが台無しになるんで」
「……有り得ると思ってしまった俺は、どっちを応援したらいいのやら……」
「裏切らないでくださいよ。信用してるんだから」
「………………わかってるよ」
「(今の間が気になる……)」
それから、カエデさんは大きなため息をついてたけど、いろいろ準備はしてくれるみたい。よかったよかった。
「呼んでくるか?」
「いえ。あの人今日は話してくれないって言ってたんで。明日になったらオレから連絡取ります。連絡先聞いてるんで」
「そうか。……何かあったら言え」
「そんなにオレって信用ないんですか?」
「いや、お前よりもあいつの方がヤバい。暴走したら、お前は絶対止められねえ」
「……それって言葉の方? 体の方?」
「後者」
「カエデさん。すぐに来られるように待機だけはしておいてください」
「了解」
あの人って、そんなに強いの? あ。でもそうだよね。あいつの執事やってたんだもんね。……そうなるよね、うん。
そして。やっと日付が変わった途端にオレは、例の写真を使って彼をここへと誘き寄せたのだった。



