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「私が言ったんだ。もしかしたら、生徒会メンバーと打ち解ける日も近いんじゃないかって」

「だから家は、シントさんに盗聴器を着けたってこと?」


 友達だということをバラしてしまえばいいと言ったら、レンがそう教えてくれた。


「ああ。だからあおいさんは、またガッチリ仮り物の笑顔を着けるようになったんだ」

『れ、レン……!』

「あの丘で話してたの聞いてたから、何となくオレらを守るために仮面を着けてるのは知ってたよ」

『うぐ……』

「でもレンは報告しないつもりだし、潜り込めさえすればオレの方に依頼するだろうし、仮面なんか着けなくていいんだって」

『……ちゃんと、葵の口から聞いてあげて。葵も、葵なりに頑張ってるんだ』

「……うん。ちゃんとわかってるよ。でも、あれ着けてて苦しそうなんだ。だからなんとかしたいんだよ」

『うん。……なんとか。してあげて』


 でも、問題はシントさんだ。接触しようにも、こうなっては彼が使えなくなってしまった。


『……ヒナタ。あのね? 葵は、シントを解雇するつもりなんだ』

「……へえ。それで? (まあ知ってたけど)」

『それで、近々本当に解雇しようとアザミたちに言うつもりなんだ』

「でも、ただじゃ解雇させてくれそうにないよね?」

「しんとさんは今、死んでるんです」

「え。……アイ。どういうこと?」

「ぼくたちも、一度シントさんと顔合わせというか。そんなことをさせられて、めっちゃ敵視されたんですけどお……」

「(しそうしそう)」

「シントくんは今、死んだってことにされてるの」

「ああ。だから、皇がいくら調べてもわからなかったってことですね」

『そうなんだ。だから、本当に死んだとしても何の問題も無いんだよ』

「……今めっちゃ危ないのシントさんじゃないですか」

『で、でも! 葵はシントを何とか生きてここを出したいんだ! 葵の目的は二つあるんだよ!』

「ん? 二つ?」


 婚約破棄以外に、何の目的が……。


「一つは、皇秋蘭サンとの婚約破棄でしょうねえ」

「ま、そうだろうね」

「あおいさんは知らないんだ。本当の婚約者がアイさんだってこと」

「だろうね。アイが息子だとも知らないし」

「だからあおいさんは、彼との婚約を無かったことにして、次の結婚相手を探す時間を確保したいってとこですか?」

『うん。アイの存在を知らない葵は、それで時間が延ばせると思ってるんだ』

「でも、なんでシントくんを皇に戻せば、それで破棄できるのかわかる?」

「え? そういえば……」

『それは、葵の相手が『皇次期当主のアキラ』だから』

「……シントさんを皇に帰して、次期当主になってもらうと」

『建前でもそう言えばいい。この縁談は、アキラが次期当主になった場合の話なんだ』

「なるほどね。それでシントさんに動いてもらうと」


 それじゃあもう一つは……?