すべてはあの花のために➓


 それから電話が終わって、モミジから彼の【極秘情報】がやってきた。


「………………」


 いや、何とも言えなかった。なんてコメントすればいい? するとしたら……。


「……スゴーイ。ヨク似合ッテマスネ」


 何してんのこの人。……ねえ。本当にこの人、家でちゃんと仕事してたの? 疑うよ、こんなの見せられたら。


「ま、まあ、まさかの衝撃写真だったけど、弱みはこれでバッチリだ。うん。間違いない」


 じゃあ取り敢えずは、彼を回収したっていうアキくんの連絡でも待つとしましょう。


「……みんな、頑張ってね」


 明日は、いよいよネタバレの日。それはもちろん、表側の。


「……。ごめん。あおい」


 追い込むことになる。でも大丈夫。『辛い』に傷が入れば『幸せ』になれるから。


「……。ごめん。…………ごめん。……っ」


 絶対に最後は助けてあげる。だから、もう少し辛抱してくれと。……心の中で呟いた。


 そしてそれは、始業式になってようやくわかることになる。


「(……オレとは目も合わせない、か。まあそれはそうだろうけど)」


 ガッツリ着いたあいつの仮面に、みんなも動揺が隠せないようだ。それからアキくんの指示で、皇へと足を運んだ。


「……おいなんだよ。今から何が始まるんだよ」

「あ。先に言っておきますけど、カエデさんは聞けないんでさっさと出ていってくださいね」

「俺だけ除け者かよ」

「あなたにはあとで違う話があるんです。時間、取れますか」

「……なんだ、内緒の話か?」

「はい。とても大事な話です」

「……わかった。終わったら連絡しろ」


 離れに通された部屋には、すでにトーマがいて引いたけど、まあ呼んで正解だ。カエデさんとはそう話をこっそりしておいたおかげで、彼が入ってきた時あっさり出て行ってくれた。


「(さてさて、何を話してくれるのかな)」


 みんなと合わせて驚いた反応をしたりするのは若干面倒くさいけど、まだバラさない。


「(彼が、日記をどう扱おうとしてるのか。お手並み拝見といこうじゃん)」


 そうして彼は、たくさんたくさん脱線してしまったあと、なんとか話をしてくれた。


「(……条件付き、か……)」


 でも申し訳ないんですけど、ここにいるみんなはそういうパズル系みたいな、暗号とか解くの大の苦手なんですよ。頭固いから。あと素直だから。


「(ま、そんな条件なんかオレがぶっ壊してやりますけどね)」


 それから約束通り、トーマにあいつの写真をしょうがなくあげたあと、オレはみんなと一緒に帰った振りをしてもう一度カエデさんに、離れの応接間に案内してもらった。


「それで? なんだよ話って」


 カエデさんも時間を作ってくれたのか、オレ以上に応接間の部屋のソファーで寛いでいた。


「言伝を預かっています」

「……は?」

「『俺が貸したド〇クエいい加減返して。やりたくなったから』」

「ど、ドラ〇エ?」

「『あの時は何も言わずに出ていってごめん。今度飯でも食いに行こう』」

「……お、おい」

「『あと、どうやらミクが危ない薬に手を出したみたいだから、今度一緒に活を入れに行こうね♡』」

「お、おま……」

「だそうです。重要なのは最後の♡だそうで」

「いや、絶対関係ねえだろそこ」

「だって言ってたんですもん。オレにそんな冷たい目向けないでくださいよ」

「……会った、のか。いや。……会えた、のか……?」


 カエデさんは冷たい視線を代え、信じられないような目でオレを見てきた。……なんだろう。受け取り手からしてみたら大差ないなこれ。


「……どうしても会わなくてはいけなかったので、父に頼み込んで」

「……元気、してたか」

「はい。それはもう、娘に似過ぎて元気でバカで変わってました」

「そうかそう……え。む、娘……?」


 まあ驚くのも無理はない。カナタさん、誰にも言ってないみたいだし。


「カナタさんからは許可をもらってますので、話せる範囲でお話しします」