「――そうだ。君の意見も聞いてみようかしら」
「なんですか」
「いえね？ 今度、全然使えなくなった子がいるから、その処遇をどうしようかな～っと思って」
「はあ……」
「それでね？ やっぱりここは始末するにこしたことないと思うのよー」
「え」
「だってそうでしょ？ ここのこと、知ってるんだもの。ただで追い出すわけにもいかないし～？」
「……やっぱりここって怖いとこなんですね。ナイフとか持ってたから、そうだとは思いましたけど」
「あは。バレちゃったか～。でもでも、君は殺さないから安心してねー？」
「いや、ていうかあの話が本当なんだったら、オレはあなたたち側につきますよ」
「あら。嬉しいこと言ってくれるわね」
ほんと。まんまと騙されてるなんて。バカな子。でも、道具としては最高よ～。
「だから、消しちゃったらいいかなって。あなたの意見も参考に？」
そうは言いつつも、選択肢は一つしかない。
答えは消去だ。まあすでに死んでいる存在なんだから、今更殺したって死体が上がってくるだけで何にも問題は無い。
「……消せばいいんじゃないですか」
「あ。やっぱり～？ あなたならそう言うと思ってたわ」
やっぱりこの子は面白い。意見がよく合うもの。
「だったらさっさと始末させないとね？」
「いやいや、消せばいいっていうのは、ここにいたことをですよ」
「え？」
かと思えば、とんでもない面白いアイディアを言ってくる。
「って言っても、その方法があるのか知らないですけど」
「……もしあったなら、あなたはどうするの？」
ただ殺すことよりも、もっと残忍な方法を言い出すもんだから。
「知らないですけど、今までここで働いていたんでしょ？ あなたにとっては結構使えた？」
「……まあそうね。なかなかいい道具だったかしら」
「それでも捨てるというなら、捨てた後も本人は覚えてなくてもいい感じに使ってみればいいのにってことですよ。だって、勿体ないじゃないですか」
「……いい感じって？」
「え。……そうだな。たとえばですけど、その人を大事に思ってる人たちを道具として扱うとか？」
「え？」
「それか、狙い目があるならわざとそこに大事にさせたあと、その人を人質にとってその組織ごと操るとか」
「……だったら、その次の場所を飲み込んじゃえるかもしれないってこと？」
「まあそんな感じですか。言ってることは同じだし」
「……面白いわね」
「え？」
「いいわ。それにしましょう」
だってきっと、あの子はバカだけれど、気持ち悪いぐらい彼のことが大事だったもの。
解雇したとしてもきっと皇に戻す気だし、……それにバカな子だから、婚約の破棄に動こうとするはずだわ。
もう、何もかもお見通し。そんなの、あの子がいきなりそんなこと言うわけないじゃない？ ましてや唯一の味方に、『使えない』なんて。
「ほんと、目に浮かぶようだわ？」
あの子の顔が、絶望に染まる瞬間が。……ねえ？
