「……取り敢えず、殴られるのと蹴られるのとデコピン、どれがいいですか」
「ええ!?」
なんでつくづくここの家族は……。はあ。言ってたらキリがないからやめておくけど。
「ほら。どれがいいかさっさと選んで」
「え。……じゃ、じゃあデコピンで」
そう言って彼もつるんっと前髪を上げたので、思い切りぶちかました。どうなったかは、ご想像通り。
「いてて……。いやーすごいね!! 俺、こんなすごいデコピン食らったの初めてだ!」
「(喜んでる。やっぱ似てるわ……)」
案の定彼も、どこから取り出したのかバッテンの絆創膏をおでこにバッチリ貼って戻ってきた。
「でも、デコピンなんかで許してくれるんだねひなたくんは」
許すなんて言ってないのに、わかってると言いたいのか。そう言ってくる当たり、やっぱり父親なんだなと思う。
「……ま、もうすでに一人それで許してるんで」
「ん?」
……さてと。聞いたら事情はなんにせよ、彼の方も守るためにそうしてきたみたいだった。
「オレ、一昨日行って、昨日帰ってきたんですけど」
「ん? どこへ?」
「言伝を預かってます」
「??」
こんな人を、オレが助けられるかどうかはわからないけれど。それでも、少しでも彼の力になればいい。……そして彼もまた、オレの力になって欲しい。
「『ごめんなさい』と。それから、『待ってるわ』と。それだけを」
初めはわからなかった彼も、意味がわかってだんだんと目を見開いてきている。
「信じるかどうかはあなた次第です」
そう言ってオレは、あいつが舟で捨てられたあと、どうなったかを彼に話をした。そして、……時間が迫っていること。――……それから。
「ミク……」
彼がミクと呼ぶ乾実栗が、事情があるにせよ、あいつを縛っていることに変わりはないこと。そして。
「彼もまた、望月という女性を愛した一人です」
「ええ……!?」
「クルミさんではありません。ですが、道明寺薊の妻、エリカの前の奥さんが望月だということはわかっています。なので」
「え。……い、今。エリカって、言った?」
「……? はい。そうですけど」
「確か彼女も、あおいを消そうとしてるって……」
「……秘書のミクリ、今のあいつの父親アザミ、それからその妻エリカ。この三人は、あいつを消そうとしてる張本人であり、また、薬で狂ってしまった人たちでもあります」
「……言ったでしょ。俺にも相手がいたって」
「……? はい。確か、白木院さんと」
「名前は、……白木院エリカというんだ」
「……!!」



