「都子? うん、そうだよ。ミクの妹ー。ていうかひなたくんは、なんでミクのこと知ってるの?」
なんだろう。今、この人を無性に殴りたいんだけど。
「ど、どうしたのひなたくん。溢れんばかりの禍々しいオーラが……」
「はあ。……いえ、何でもありません」
今は車に乗せてもらって、どこかへ移動中。
「……それで? ひなたくんはあおいの彼氏なの?」
「はあああー……」
「え……。なんでため息つくの、そこで」
「いやほんと、似たもの同士だなと思って。そして違います。ただの友達です」
「な。なんでそんなに怒ってるの……」
さて、首を傾げてる彼は放っておくとして。……何から話したらいいものか。
「ところでカナタさん。今どちらへ向かっているんですか?」
「別荘だよ」
「別荘に何かあるんですか?」
「うん。捨てるなんてできなかったからさ。大事なものは、全部あそこに内緒で持って行ったんだ」
「それって……」
「……ひなたくんは、どうして俺のとこまで来たのかな」
「どうしてって、そりゃ。一言じゃ言えないですけど……」
「だったら、俺がしてしまったことは知ってる? あの子に」
「……はい。知ってます」
「そっか。……あおいから聞いたの?」
「いえ。あいつからは、聞いてはいません」
「……? じゃあなんで……」
「カナタさんが今、大事な会議を放り出してまでオレの話を聞こうとしている時点で、あなたが本当はどういう方なのかは大体想像が付いてます」
「ん? そ、そう?」
「ですが、あくまで大体です。どうしてあなたがそんなことをしたのか。……してしまったことは知っていても、“どうして”そんなことをしたかまでの、本当のところは予想しかできません」
「………………」
「なので、教えてくれませんか? カナタさん。もういいと思うんです。頑張って仕事しなくても」
「え」
「さっき秘書のミヤコさんに少しだけ聞きました。ほんの少しですけど。……それでも皆さん、あなたのこと心配されてましたよ? 今日は帰ってくんなって伝えとけと言われました」
「え。絶対違うでしょ。言い方変えたでしょ」
「……チッ」
「合っとるんかい……」
そして、別荘に到着した。……え。ログハウス? マジですか。
「まあ今日は仕事はしないよ。というかできなさそうだから」
「カナタさん……」
中に入り、そのまま地下へと案内された。
「……こ、れ……」
「ん? ああ、向日葵畑の写真だね」
その一室は、未だに生活感が溢れていて。当時の、きっとそのまま彼は持って来たのだろう。何でか泣きそうになった。
「……どうして、か。許されることではないんだけどね」
「そうかどうか、今はオレが判断します。最終的な判断をするのはあいつですが」
「……うん。そうだね。それじゃあ、聞いてくれるかな」
そしてカナタさんは、クルミさんと同じように。出会った時から今までのことを、懐かしむような表情で話してくれた。



