それから十数年。俺は、彼女にまた会うために。そして、あおいが生きてると信じて。父と約束をした。俺が社長になったその時、したいことがあるんだと。
父は、平凡の俺しか知らなかった。だから、もしかしたら社長になれないと思って、その条件を呑んだのかも知れない。
仕事に支障は絶対に来さない。絶対に仕事はやり通す。
それから社長になった俺は、空いた時間を見つけては彼女を、そしてあおいの行方を捜した。
会いたかった。何としてでも。そして、……あの時言えなかった言葉を、もう一度言いたかった。
……ごめんと。ただ、それだけ。
謝ったって、許してもらえるわけじゃないのはわかってる。それでも、きちんと話がしたい。会いたいんだ。二人に。
……あおいの行方はわからなかった。消息は掴むことができなかった。でも彼女は、望月へと帰っていた。なんで、せっかく逃れられたのに戻ったのかなんてわからなかった。
だから、彼女に話も聞きたかった。でも、そうするためには、あそこに行かないといけなかった。仕事を放り出してなど行けない。でも、一番の理由は、怖かったからだ。俺なんかのことを、……また思い出させてしまうのが。
望月に戻った方がいいと。そう思わせてしまうくらいの酷いことを、いつの間にかしてしまっていたみたいだから。
そして、またもし、彼女があそこから出られた、その時は……。もう絶対に帰させたりしない。絶対に手放してやらない。
だから、望月のありとあらゆる資料を探しまくって、そういうことをしていた証拠をかき集め、いつか俺が動き出したその時のために、大事に仕舞っていた。いつか、その時が来るのを。ただただ、自由に飛ぶ鳥を見つめながら待ち続けて。
「(……太陽みたいだ……)」
その時は。もしかしたら、今なのかも知れない。綺麗で。あたたかいその太陽は、俺には大きな希望に見えた。
彼がどうしてここへ来たのかはわからなかったが、父親と来て正解だ。たとえ『やさしい』と言われようとも、俺はきっと、仕事に支障は来さないだろう。それは、社長になった今でさえ。
でも、会ってみようと思ったんだ。父親を使って。日本で、今ではトップとなったこの俺に。……一体、何の話があるんだろうと。
「(……会って正解だ)」
彼は、知っているんだろう。俺の、大きな罪でさえ。……そして。
「どうか、お願いです。オレと一緒に。……向日葵を助けて欲しいんです」
俺が。わからなかった。
大事な大事な『向日葵』のことを――……。



