「そろそろいいでしょー」


 復活したら、スマホを取りに生徒会室へ戻った。


「……おかえり。来ると思ってた」

「あ、キサ」


 オレのスマホを持って、キサがソファーで寛いでいた。


「……日向。あんた何がしたいの」

「あいつ泣いた?」

「あたしの質問に答えて」

「オレの質問に答えてくれたら、答えてあげてもいいよ」


 にっこり笑ってそう言ったら、キサが悔しそうに顔を歪めた。


「……そう。また、泣けなかったんだね」

「泣きそうだったよ。泣いたらスッキリするのにって言ったのに、あっちゃんは泣かなかった。……泣けないんだって。そう言ってた」

「……バカだね、ほんと」

「日向?」


 なんで、一人で全部抱え込もうとしてるんだか。
 心配させないようにって? そんなの、本当のあんた知ってるオレらからしてみたらもう、あんな仮り物通用しないって。

 悔しくて、眉を顰めながら呆れた笑みを浮かべるオレに、キサが不安そうな顔になる。


「ごめんねキサ。あとのこと頼んだりして」

「それは、いいけど……」

「わけはちゃんとあるんだ。あんなこと言ったのも、こんなことしたのも」

「……もうあんたが何かしてるなと思ったら、あっちゃんのためなんだろうって思ってるから」

「……そっか」

「ねえ。まだ教えてくれないの?」

「……うん。ごめん」

「日向……」

「でも、絶対に話すから」


 そう。だって話さないといけないんだから。
 真っ直ぐにキサを見つめていると、根負けしたキサが視線を逸らす。


「はあ。……絶対よ? あと、ちゃんとあっちゃんにも話して」

「わかってるわかってる」


 それからキサからスマホを回収して録音内容を確認した。


「(バレンタイン、ね……)」


 次の作戦は、そこで仕掛けよう。
 ツバサまでのところまででカットして、その日のうちに報告へ行った。