夜遅かったし、二人を起こしてしまわないようこっそりと俺は家を出て、爺やが指定した場所までは行けそうになかったから、車で来てもらった。
「あれ? あおばもいる……」
「夜分遅くに申し訳ありません、かなた様」
車の中にはあおばもいた。……何となく、用件がわかってしまった。このメンツで。
「……カナタ様。そろそろ、限界で御座います」
「そっか」
なんとか振り絞って、爺やがそう教えてくれた。
……やっぱりそうだ。俺、勘だけは結構いいんだよ。それも、悪い方にばっかり。
「カナタ様を捜し、早二年が経とうとしております」
「うん」
「まだ、こちらにいること自体は家の方にはバレてはいません。しのさんが、頑張って嘘八百を並べているみたいなので」
「流石教育係」
「そこで褒められるのも如何なものか……」
でも……そっか。多分、爺やが言いたいことは、何となくわかる。
「もう。その嘘八百も限界で御座います。見つかるのも。……時間の問題かと」
「……そっか」
ほらね。やっぱり俺は、幸せになんてなれないんだ。
そんなの求めたって、嘲笑われるだけ。足掻こうとしたって、……無駄な話だったんだよ。
「……見つかったら。一番危険なのは、くるちゃんとあおいか……」
「……恐らくは」
「で、でも。かなた様? まだ、そうとは限りません。また、別のところへ移り住めば……」
それも、何度も考えた。でも結局、もう限界ということは、家も手段を選ばなくなると。そういうことだ。
「……帰るよ。家に」
「カナタ様……」
「かなた様……」
ただ彼女を、……娘を守れるのなら。俺に自由がないだけで、幸せになれるのなら。それが、俺にとっての幸せになるんだから。
「ただ、少し時間くれる? くるちゃんに勘付かれたくない。それからあおいにも」
「……畏まりました。爺やもあと一ヶ月。いえ半年。いやいや、一年だって誤魔化して見せましょう」
……そうか。頑張って、一年が限界ってことか。
「かなた様。一体これからどうするおつもりで……?」
「ん? ああ、あおば。ごめん。サプライズは無しになりそう」
「……!! ……。かなた、さま……」
きっと、何となく俺がしようとしていることがわかったんだろう。今にも泣きそうな顔を、二人がしていた。
「二人とも。先に、きちんと言っておく」
でも、……なんでだろうな。なんで俺は、涙が出ないんだろうね。
「こんな、わかり切ってた俺の我が儘に付き合ってくれて。……本当に、ありがとう」
……ああ、そうか。そうだよな。だって、結局は出せなかったんだから。
「いいえカナタ様。爺やは、カナタ様の味方で御座います」
「爺や……」
「かなた様。どうか、最後まで諦めないでください。……絶対にお二人を幸せにできるのは、かなた様だけなのですから」
「あおば。…………ありがとう」
結局のところ、もう最初から諦めてるじゃないか。
だから、……出せなかった。ああ。……バカだな、本当。
「(……諦めない、か……)」
今、こうなった時点で、なんだかスッキリしてる自分がいる。きっと出さなかったから、綺麗なままなんだ、俺は。
「(……足掻いてやろうか……)」
し始めるのは遅かったかも知れないけれど。それでも俺は、……もう。諦めることなんてしたくなかった。



