「いろいろ大変だったでしょ」

「いいや。大したことじゃない」


 母さんを警察に連れて行ってから、報道陣があとを絶たなかった。けれど薬物反応が出ず、ただの精神病だということで今は事なきを得ている。
 それに、ここは隠れ家みたいなものだから、ツバサはこっちに来ていたことがよくあった。今は落ち着いたから、また戻っていったけど。その時の、父さんの報道陣への対応が真っ直ぐで、……すごくかっこよかった。


「父さんって、かっこいいよね」

「……そうか?」


 見た目ももちろん。申し訳ないけど、父さん以上にかっこいい人をオレは知らない。……まあ、キレたらめっちゃ怖いけど。
 亭主関白っぽいけど、なんだかんだで母さんのこと大好きで、仲良く支え合ってた。また、一日でも早く母さんが戻ってきたらいいな。


「母さんはどう?」

「行ってないのか? 見舞いに」

「うん。ちょっとバタバタしてて行けてなくて。でも、もう少しで一段落するから、その時に行くよ」

「……何かしてるのか? ああそうか。来年も生徒会になるからいろいろ大変なのか」

「うーん。掠ってはいるけどね。根本は違うよ」

「……そうなのか?」


 ご飯も食べ終わったから、そろそろ本題に入ろうか。きっと、父さんもわかって来てるんだ。ここに。


「オレから連絡があってビックリした?」

「……まあ、そうだな」


 オレが父さんに連絡を入れるなんてこと、滅多にない。だから父さんも、オレが“父さんだけに話がある”ことをわかってくれて、ツバサには内緒でここまで来てくれたんだ。

 ――さあ。最後の駒を手に入れましょうか。


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