すべてはあの花のために➓


「……言いましたね?」

「え……?」


 あれ……? 何故だろう。
 さっきまで苦しそうな、つらそうな顔をしていた彼の表情は……。してやったりと。今にも聞こえてきそうな顔をしていた。


「今の会話、ばっちり録音してるんで」

「ええ……!?」


 そう言って取り出したのは、またもやスマホ。二台持ちとは……。


「言質はバッチリ取りましたからね。果たさなかったら助けませんよ」

「……ふふっ」


 なんでこうも彼は必死なんだろう。それが、……ちょっとおかしくなってしまった。


「……なんですか。オレは本気ですよ」

「でも、助けに来てくれないとあの子に話だってできないわ?」

「……じゃあ、オレのハンカチを鼻水と涙でぐちょぐちょにしたって言いますよ」

「誰に?」

「……チッ」

「ふふっ」


 きっと彼は、あの子には内緒でこんなことをしているんだろう。録音してるのがその証拠。
 わたしのことなんか知っているのは数が知れてるし、寧ろ言ってくれるんだったら有難いわ。わたしが元気にしてるってこと、間接的だけど伝えてくれるんだから。


「大丈夫よひなたくん。助けてくれたら、必ず言うわ。会えたら絶対に。だって、あなたのおかげで、今すぐにでも言いたくなるくらい勇気をもらえたんだもの」

「……それなら、いいんです」


 どこか不服そうだけど……でも、やっぱり嬉しそうに。今度は年相応に小さく笑っていた。