すべてはあの花のために➓


 夜なら誰にもバレないだろうから、その時に行ったらいいと。そう言われたから夜まで待ったんだけど。マサキさんが「やっぱ行きとうない!」って駄々を捏ねて、結局のところオレ一人でここまで来てしまった。
 ……暗かった。そしてめっちゃ怖かった。ダメなんだって、ほんと。こういうの。しかもひんやりする風がまた、そういう思考へと、持って行きたくないのに無理矢理そうしてきている気がしてならない。

 そして、なんとか辿り着いたはいいものの、本当にこんなぼろい社なんかに人がいるのかと思った。
 でも、オレの予想だと、ここを守っているのはあいつの母親だ。……いや、これで違ったら恥ずかしかったけど。

 マサキさんの話によると、出てこられないみたいだったからどうしたものかと思ったけど、流石に自分の子どもの危機とあれば顔くらい見せてくれるだろうと思った。……オレが思っている、母親ならの話だけど。

 でも話したら、案の定彼女は自分からその戸を開けてくれた。正直、あいつがいると思って手を伸ばしそうになった。わざとポケットに入れてたのはそのためだ。似てるからって、母親に手を出すのは不味いでしょ。


「それじゃあ一発殴ってもいいですか」

「ええ……!?」


 いやいや。手は出さないけど、その顔拝んだら一発は絶対にやろうと思ってたんだよね。


「言ったでしょ。オレはこれでも怒ってるんだって」

「……えっと……」


 狼狽えてる姿が、完全にあいつと重なる。オレは、振り被っていたグーをパーにした。


「じゃあビンタでいいです」

「……す、することはするのね……」


 しょうがないから、そのパーをキツネに変えた。


「だったら、デコピンで許してあげます」

「え?」

「ほら。早くおでこ出してください」

「え? あ、はい」


 そう言ったら、バッチこーい! と言わんばかりにつるっと前髪を上げてスタンバってくれた。


「あ。ちなみにオレのデコピン、ビンタなんかよりも痛いんで」

「え――っ、いったああああああぁぁぁぁぃぃぃぃ!!!!」


 そんな大きな声出して見つかったらどうするんだよ、と思ったけど。まあいっか。