「オレが知ってるクリオネは、悪魔になりたかったわけじゃないんです」
言いたいことはわからない。でも必死に伝わってくる想いに、わたしはただ耳を傾ける。
「そのクリオネは、ただ助けてあげたかっただけなんです。その時だけ、『憑きやすい体』を利用することで」
……憑依体質。
望月の家系は、代々憑きやすい体質と言われている。個体差があるから一概には言えないけれど。わたしは、憑きやすいではなく『見えやすい』だったわけだし。
「その人をクリオネは、ここの人間だと思った。だから、助けてあげるのと同時に、ここから隠してやらないとと思ったんです」
「(どういうこと……?)」
「こんなことをするなんて、ここの人間たちに違いない。だから、その人から名字を引き替えに助けてあげたって、悪い意味で有名だから、すぐに名字は返ってくると。そう思っていた」
「(この子は、一体……)」
「その名字を奪ってしまうのと引き替えに、クリオネはその人を助けました。呼んでもらえたなら、すぐにその体から出ていく契約を結んで」
まるで童話のような話に、よくわからなくなってきた。
「その時の契約として、20歳までを条件にその人をクリオネは助けたんです。……20歳になった時か、あるいは結婚をして名字が変わってしまった時。クリオネは、【悪魔】と化してしまう」
現実味がなくなってしまった話に、なんとかついていくので精一杯だった。
「その期限がもう、迫ってきてるんです」
……そうは言われても。ここから出られないわたしに、一体どうしろと。
「まだわかりませんか? いや、もしかしたら考えたくないのかな。……ううん。きっとあなたならわかるはずだ。だって、神の子はみんな頭がいいんでしょう?」
「(……やっぱり知ってるんだわ。まあ有名だから。悪い意味でだけど)」
そうしたら、彼が立ち上がったような気配があった。声も、高い位置から聞こえてきて、あの時のことが頭をよぎる。
「じゃあ、もう一度言いますね」
オレが助けたい人は、もうすぐ枯れてしまいます。それは期限が迫っているから。20歳だから? ……いいえ。それは違います。結婚を、その家に無理矢理させられてしまうからなんです。
その前の家では、よくしてもらっていたみたいですが、暴れてました。それは、クリオネがその人に憑いてしまったから。安定するまでは、それはそれは大暴れしたみたいですけどね。
何でそのクリオネが、ここのことを知っていたのか。……それはそうでしょう。元ここの人間なんだから。神の子と称され、ただ人として生きたかった、恋をした、海で亡くなった女性なんだから。
舟で子どもを海に捨てるなんてことをするのは、ここの人間ぐらいだ。そう思った【海の天使】は、自分と同じ道を歩んで欲しくなかった少女を、必死に助けました。その対価として、一旦少女の名字を、時を縛るだけのものにしようとした。
でも、その少女は望月の子。有名だから、その縛りである名前を呼ばれることで、すぐに自分の役目は終わり体から出ていくことができるだろう。
「……そう、思っていました。海に落ちてしまった、その少女を助けるまでは――」
言いたいことはわからない。でも必死に伝わってくる想いに、わたしはただ耳を傾ける。
「そのクリオネは、ただ助けてあげたかっただけなんです。その時だけ、『憑きやすい体』を利用することで」
……憑依体質。
望月の家系は、代々憑きやすい体質と言われている。個体差があるから一概には言えないけれど。わたしは、憑きやすいではなく『見えやすい』だったわけだし。
「その人をクリオネは、ここの人間だと思った。だから、助けてあげるのと同時に、ここから隠してやらないとと思ったんです」
「(どういうこと……?)」
「こんなことをするなんて、ここの人間たちに違いない。だから、その人から名字を引き替えに助けてあげたって、悪い意味で有名だから、すぐに名字は返ってくると。そう思っていた」
「(この子は、一体……)」
「その名字を奪ってしまうのと引き替えに、クリオネはその人を助けました。呼んでもらえたなら、すぐにその体から出ていく契約を結んで」
まるで童話のような話に、よくわからなくなってきた。
「その時の契約として、20歳までを条件にその人をクリオネは助けたんです。……20歳になった時か、あるいは結婚をして名字が変わってしまった時。クリオネは、【悪魔】と化してしまう」
現実味がなくなってしまった話に、なんとかついていくので精一杯だった。
「その期限がもう、迫ってきてるんです」
……そうは言われても。ここから出られないわたしに、一体どうしろと。
「まだわかりませんか? いや、もしかしたら考えたくないのかな。……ううん。きっとあなたならわかるはずだ。だって、神の子はみんな頭がいいんでしょう?」
「(……やっぱり知ってるんだわ。まあ有名だから。悪い意味でだけど)」
そうしたら、彼が立ち上がったような気配があった。声も、高い位置から聞こえてきて、あの時のことが頭をよぎる。
「じゃあ、もう一度言いますね」
オレが助けたい人は、もうすぐ枯れてしまいます。それは期限が迫っているから。20歳だから? ……いいえ。それは違います。結婚を、その家に無理矢理させられてしまうからなんです。
その前の家では、よくしてもらっていたみたいですが、暴れてました。それは、クリオネがその人に憑いてしまったから。安定するまでは、それはそれは大暴れしたみたいですけどね。
何でそのクリオネが、ここのことを知っていたのか。……それはそうでしょう。元ここの人間なんだから。神の子と称され、ただ人として生きたかった、恋をした、海で亡くなった女性なんだから。
舟で子どもを海に捨てるなんてことをするのは、ここの人間ぐらいだ。そう思った【海の天使】は、自分と同じ道を歩んで欲しくなかった少女を、必死に助けました。その対価として、一旦少女の名字を、時を縛るだけのものにしようとした。
でも、その少女は望月の子。有名だから、その縛りである名前を呼ばれることで、すぐに自分の役目は終わり体から出ていくことができるだろう。
「……そう、思っていました。海に落ちてしまった、その少女を助けるまでは――」



