「……だから。ちょっとしんどいの……」
「そうなんですね。もし酷いようなら、お薬を飲んだら少しは落ち着くかもしれません」
「あおば、また敬語になってる。友達なんだから、敬語はやめてって言ってるのに」
「すみま、……ごめんなさい」
「……あんまりそれ変わってないと思うわよ」
そんなことがあって、わたしの友達の青葉に少し、話を聞いてもらっていた。
「おかあしゃ、……あ。こんにちは!」
話をしていたら、あおいがこちらにやってきた。
あおいにも彼にも、今の話は内緒だ。これ以上心配を掛けたくなんてないし、あおいは……すぐに気が付いてしまうから。
「(あおいには、望月になんて縛られて生きて欲しくないんだもの)」
実は言うと、わたしが料理を、家事をできるようになったのもあおばのおかげだ。本当に、とっても大切な友達だ。
「こんにちは。あおいちゃん」
「こんにちは! へへ~」
何度かあおばはここへ来たことがあるから、あおいもすっかり懐いているようだ。
「おかあしゃんと、とってもなかよし!」
「え? ふふ。ええそうね?」
あおばの方も、初めはオドオドしていたけれど、あおいがグイグイ行くせいか子どもの相手もすっかり慣れっこだ。これも見ていて楽しい。
「でも! おとうしゃん! もっとなかよし!!」
「え?」
「ん? ……あおい? あおばはわたしのお友達よ?」
まあ、あおばの方にもいろいろ迷惑を掛けているのだけれど、あおいもいきなり、なんでそんなことを言い出したのだろう。
「ううん! おとうしゃんとが、もっとなかよし!! ね?」
「え。……えーっと」
こんなこと、今まで言ったことなんてなかったのに。こう何度も言う時は、大抵何か『知っている時』だ。
あおばもそう思っているだろうと思って目線を向けたら、目を見開いて驚いているようだった。それを見て、わたしも驚いてしまう。
「(……あおば……?)」
え。……何か隠してるってこと? わたし、全然気が付かなかったのに。
「えーっと。……あおいちゃん? 仲良くなれたらいいなって思うわ? まだまだわたしは仲良くないの。……だから、応援してくれる?」
「うんうん! みんななかよし!! わーい!!」
「(……あおば)」
あおばのことは信頼している。それに、彼のことももちろん。だから特に、このことに関しては気にしていなかった。
だってわたしは今、……望月のことで頭がいっぱいだったから。
「たっだいま~……」
「おかえりなさい」
「おかえりなしゃい!!」
だから、彼の帰りが遅くなろうとも、わたしは気になんてしていなかった。
「今日も遅くまでご苦労様」
「ごくろう!!」
「はは。……うん。疲れちゃったよー」
今は特に大きな仕事を任されてるとかは聞いていないから、もしかしたら付き合いとか大変なのかも。
「おとうしゃんおとうしゃん!」
「ん? なんだ~?」
両手を大きく広げているあおいを、軽々と持ち上げてにこにこ笑う二人を見ているだけで、望月は薄れてくれる気がした。
「きょうも、おかあしゃんのおともだち! あそんだ?」
「「え?」」
彼の顔をぺたぺたと小さな手で触りながら、あおいがそう言い出した。
「……どういうこと?」
「ん? あおいが勝手にそう思ってるんじゃないか? 俺の帰りがあまりにも遅いから。ね~?」
これ以上高くなんて上げられないくらいの高い高いをあおいにしてあげながら、彼はあっけらかんにそう言う。まあ、別にあおばと会ってることくらいは、本当だとしても隠すことなんてないし……。
「きょう! おたんじょうび!! おともだち!!」
「「え」」
「ぷれぜんと! どうだった?? えがお! なった??」
「ちょ。……あなた? どういうこと?」
あおいがこう言うんだから、多分このことは本当なんだろう。
でもそれなら、わたしだってあおばを祝いたかった。何で二人だけでコソコソしてるわけ?
「え? ……く、くるちゃん角! 角出てる!! 収めて……っ!」
「どういうことよ」
わたしだけ除け者? なんでそんなことするのよ。



