「あんたはいつからアキくんが好きだったの」

「……『わたし』がアキラくんを好きになったのは、彼の七つの誕生日パーティーに行った時」


 あんたっつっただろうが。アオイじゃなくて、あんたに聞いたんだっつの。
 でも、ここで一気に空気が変わる。


「アオイちゃん、言っていいかどうかわからないんだけど……」

「好きがわからないって話?」

「(……ま、あんなことがあったらそうなるか)」


 実の両親でさえ、愛し合っていたはずなのに。花咲家の人たちでさえ、あんなことになったんだ。


「わたしは好きがわからないし、『わたし』はアキラくんが好きだ。それ以上でもそれ以下でもないし、もうこれ以上このことは話したくもない」


 そう言って突き放したのは向こうからだ。みんなはちゃんと、あんたを心配して、声を掛けてたんだから。
 不安、心配、嫉妬、苛立ち、嫌悪、拒絶。大事だからこそ、思う気持ちが強くなる。


「(あとはオレが、傷つければいい)」


 今回は、あいつに話させるのが目的じゃない。もちろん話したら万々歳だけど、それはしないだろうからね。


「……いいでしょもう。いい加減にこれ解いて」

「いいわけないだろ!」


 家の信頼を。仮面の破壊を。


「大事なこと隠してた奴なんか知るかよ」

「わけわからない……。わかるように説明してよ……っ」


 たとえ今、苦しんでいたとしても。


「何それ。それがわからないおれらのこと、馬鹿にしてるの」

「葵チャンも、ちょっと頭冷やせば」


 いつか必ず、救われる。


「悪いけどオレはまだあんた許してないよ」


 たとえ、傷つく度に心に亀裂が入ろうと。


「一つ。……何、罪増やしてんだよ」


 傷つく度に、仮面が割れ出す。


「何。オレの友達に、つらそうな顔させてんだよ……」


 ごめんね。オレには、こんな方法しか取れないんだ。


「何オレの友達怒らせてんだよ!」


 オレじゃなかったら、違う方法があったんだろうな。


「あんた、最低だよ」


 ほんと、最低だよ。


「あんたなんか、友達じゃない」


 あんたなんかの友達に。……オレが、なれるわけがない。なれる資格なんてない。


「ごめんけど。オレはあんたのこと、友達だなんて最初から思ってないから」


 あんたを、傷つけることでしか守れないんだ。
 最低なのは、……オレの方。