そう言われて、結局のところ俺は忠実に再現してしまったんだけど。


「……泣かせちゃった」


 トボトボ……と。真っ暗な道を歩いていた。流石に一年間通い詰めただけあって、もう迷子にはならない。


「……開けてくれなかった。やっぱり俺、嫌われてるんだ……」


 自分が言ったくせに、自分の方がダメージ食らってたりする。
 ……あー。やだやだ。帰ったらFFでもしようかな。あれ? でもやったのだいぶ前だから、どこまでやったか覚えてないや。また最初からかー……。


「……決めてるんだ。決めたんだ。これは、……譲れないんだから」


 神社の敷地を出て、ふと後ろを振り返る。


「……いいの? 本当に、このままで」


 俺自身にもだけれど、彼女にも。
 でも、……俺はもう『さようなら』と言ってしまった。『また』は、……言わなかった。

 これは、ミクたちの考えたものじゃない。俺が付け足したものだけど……。


「……言うんじゃなかった」


 やさしい彼女なら、きっと俺のことを追いかけてくれると。……そう、思っていたのに。


「次から、どうしよう……」


 会いに来たい。でも、……俺もそろそろ限界。だから、今回がきっと、そのギリギリのライン。


「……会いたいな」


 きっと彼女なら、また来たって許してくれるんだろうけど。ああ言ってしまった手前、次からはどんなことを話したらいいのか。どんな声色で話したらいいのかわからない。

 ……大通りに出てしまった。あともう少しで、着いてしまう。


「……名前、聞けばよかった」


 俺の決めたことは、もしかしたら間違いだったのかもしれないな。

 そう、思っていた時だった。


「天誅――ッ!!」

「ぐはっ!!??」


 背中に途轍もない衝撃を食らった▼

 人類の可動範囲を優に超えたエビ反りになったから、背骨がボキボキに折れたんじゃないかと思ったけど。その時に見えたのは、巫女さんの姿で……。


「……許さない」


 ……あ。あれ? み、巫女さんのはずなのに、何でか途轍もなく禍々しいオーラが見えるんですけど。


「許さない」


 あ、あれ……? 角とか、生えてません?? 違うか、黒い翼? いやいや、目が赤くぎらついてるように見えるですけどー……??


「許さない……!!」

「ええ!?!?」


 そう言いながら、端から見たら悪霊に取り憑かれた巫女さんが俺に襲いかかってきた▼


「ギブギブギブ……!!」


 彼女は、さっと俺の後ろ側に回ったと思ったら、腕で俺の首を絞めてきた。しかも、マジで死にそう。


「……ぐ。ぐるじい……」

「許さない……!」


 一体何を許さないのか聞きたいのに、首を絞められて苦しくなって、問うことさえできない。


「……許さない」


 彼女の腕は、一向に緩まずに、怒りでなのか震えていて……。……ん? 震えて?


「……ゆるさ。ない……」


 ぽたぽたと。上から透明な雫が落ちてきていた。