「はーい。これから罪人に洗い浚い白状してもらおうと思いまーす。撮影と実況はオレ、ヒナタでお送りしまーす」
年明け早々。みんなであいつの尋問に取り掛かった。みんな、最後に見たのはあの仮面を着けてたあいつだったから心配してたけど、生徒会室では外してたから安心したらしい。
初めは、あいつの話を聞いてたんだ。なんかあったんだろうと思って、おちゃらけてたけど。
「(ていうかさっさと聞けよ、聞きたいこと)」
多分、聞きたい中に聞きたくないことがあるんだ。
『なんでアキくんが好きなのか』
だったらなんで、最初からそうと言って自分たちのことを振らなかったのか。それが怖くて、聞きたくても聞けないんだ。
「(ま、ツバサとキサならあいつに聞けるでしょ)」
これ以上引っ張ってもらっても困るから、尋問マイクを渡すついでにひと睨みも付けておいたけど。
「みんながアキラくんに何を聞いたかはよくわからないけど、アキラくんはあくまで『候補』だよ。だから絶対に結婚するとは限らない」
「(ま、そうだろうね)」
そこで終わっておけば、まだよかった。
自分が望んだものじゃないんだ。あれは嘘なんだ。……それくらい、言えばよかったのに。
「『わたし』がアキラくんがいいって言ったんだ。『わたし』は結婚するつもりでいるよ」
「(やっぱり言いやがった)」
だから、それが余計みんなが混乱するって。わかってるくせに、なんで言うかな。
「(ま、今回はみんなにキレてもらわないと困るしね。オレが聞いてやるしかないか)」
ごめんけど、オレは容赦しないよ。決めたんだから。守るって。助けるって。
オレができるのは、泣かすこと。傷つけること。これは、あんたを助けるためにしてることなんだ。
「(だから、……信じて。オレのこと)」
今はしんどいだろう。でも、つらかった分だけ、幸せは来るから。
「(オレが、あんたの『辛さ』に傷を付けて『幸せ』にしてあげる)」
さあ。だから泣いていいんだ。その気味が悪い仮面なんか、オレが壊してあげるから。
「罪人に問います」
ねえ。あんたは、自分の罪をちゃんとわかってる?
「あんたのせいで、みんな笑わなくなったんだけど」
知ってる? もうみんな、あんたが大事なんだ。あんたが笑ってないと笑えないくらい。
「あんたの罪は、オレの仲間から笑顔を奪ったこと」
あんたのことがみんな、大好きなんだよ。だから、大事すぎて聞けないんだよ。
「みんなもみんなだし。ちゃんとこいつから全部聞いたわけじゃないのに勝手に落ち込んでさ。それって自分の解釈じゃん。ちゃんとこいつに聞きなよ」
でもちゃんと、こいつの口から聞かないといけないんだよ。本当の真実を。嘘偽りないことを。
「ということですが、わかりましたか」
「それは。……本当に罪人だね」
あんたもあんただ。オレらが嫌うなんて、ほんとに思ってんの?
「それでは質疑応答を再開します。質問には迅速且つハッキリ答えるように」
「善処します」
これだけ大事に思ってる友達のことを。オレの仲間たちが、嫌いになるわけないじゃん。
泣かしてやろう。言えるとこまで言ったらいい。ヘタレ。ビビり。
どうせ言えないんだってわかってる。アキくんにさえあの手紙だもんね。
「(……さあ。始めようか)」
今までスマホを構えてはいたけれど、ここからが本当の『録音』だ。
さっと画面を動画からボイスメモに切り替え、ピコッと赤いボタンを押してテーブルの上に伏せておく。
「(オレに勝てると思わない方がいいよ)」
仮面なんかもう、着けさせないんだから。



