すべてはあの花のために➓


「………………」


 両方の事情を知っているところで、双方を引き合わせることなんて、きっとオレにはできない。というか、してはいけない気がする。


「……そんな感じや」

「そう、ですか」


 だってもう、アオイは死んだ人間。それに、会わせたところでどうだっていうんだ。


「でもあれやで。別に好きとかちゃうねん」


 いや、今の話を聞いたら誰だって……。


「なんや、好き……は好きなんやろうけど、家族とか兄弟とか、そんな感じや。俺にとっては、あの人んとこが家みたいなもんやったから」

「マサキさん……」


 そうは言うけれど、アオイのことを思う気持ちが溢れてる。
 ……そうやって、言い聞かせてるのか。この何十年もの間。ずっと……。


「せやから、あんま望月いうんは好きちゃうねん」

「……でしょうね」


 でも、そうは言ってもアオイもあいつも、関わっているのはその望月に他ならない。


「(このまま。何もしてあげられないんだろうか……)」


 アオイは、あいつに憑いてる死霊。本当なら、もう会えるはずなんてないんだ。
 それでも、何とかしてやりたいと思うオレは、おかしいんだろうか。


「すみません、マサキさん」


 今の話を聞いて、もうハッキリと繋がった。ほんと、この作品の世間が狭すぎて恐ろしいけどね。


「お話を聞いて確信しました。オレが行かないといけないのは、その望月です」


 つらいかもしれない。でもマサキさんだって、このまま時間が止まったままじゃいけない。……それに。


「あいつの姿や声、雰囲気を、その人に重ねて見てたってことがよくわかりました」

「……せやろな、やっぱり」


 確かにそうだろう。だって、本人と言えば本人だし、血だって繋がってる。……それでも。


「つらいのはわかります。そんなところに行きたくないのだって、十分わかってます」

「大丈夫や。……もう、俺は大丈夫やで」


 また言い聞かせてる。……でも、きっと大丈夫だ。


「マサキさんにとっても、いい機会だと思います」

「へ?」


 前に進もう。オレだって、望月なんか嫌いだ。大っ嫌いだ。それでも、まだちゃんと話を聞いてない。
 少なくとも、……そこの犠牲者(、、、)だけは、嫌いにならないで済むと思うから。


「行きましょうマサキさん。気持ちに区切り、つけに行きましょう」

「日向くん……」


 正しいことかはわからない。でも、オレはそうするべきだと思うから。


「お願いします。きっとあそこに、鍵がある」


 行こう。すべての根源へ。